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近年、子供や若者の食事で魚を食べる量が減ってきていることが問題視されています。

日本全体でみても、魚介類の1人当たりの消費量は減少し続けており、平成30年度「水産白書」によれば、食用魚介類の1人1年当たりの消費量は、平成13(2001)年度の40.2kgをピークに減少し続け、平成29(2017)年度には、24.4kgとなっています。この水準は、昭和30年代後半とほぼ同じということなので驚きます。

実は、魚をほとんど食べないような習慣を続けてしまうと、将来、健康的な問題や病気のリスクへとつながることが明らかになっているのです。

この記事では、魚に含まれる栄養成分で知られる「DHA」「EPA」について、実際どんなメリットがあるのか、また不足するとどうなってしまうのかについて、論文等を元にわかりやすく解説していきます。
また、手軽にDHA・EPAを摂ることができる製品ついてもご紹介していますので、参考にしてみてください。

そもそも「DHA」「EPA」とは、どんな栄養素?

肉や魚には「脂質」という栄養素が含まれています。魚に含まれる脂質は牛や豚・鶏由来の脂質、また植物由来の脂質と同じ主成分ではあるものの、組成する脂肪酸の組成が異なります。魚由来の脂肪酸は、オメガ3脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)EPA(エイコサペンタエン酸)がメインなのです。
魚由来の脂質にDHAやEPAが多いのは、植物プランクトンを起源とする摂餌による食物連鎖で増加したものと考えられています。

一般的に食べられる部分にDHAやEPAの含有が多い魚として、

  • マグロ類
  • カツオ類
  • サバ類
  • イワシ
  • サンマ
  • ブリやハマチなどの青魚
  • が多く挙げられます。ただし、魚に含まれる脂質含有やDHA、EPAの組成比は一律ではなく、季節や生息地域によって変動することが調査により明らかになっています。
    例えば、春から夏にかけて黒潮に載って北上する「上りカツオ(初ガツオ)」よりも、秋に南下する「戻りカツオ」のほうが2倍以上も含有量が多いのです。

    戻りカツオは脂がのっていて美味しく、旬の秋の時期の方が、栄養素もたっぷりと含まれているんですね。

    乳児にとっても「DHA」は必要不可欠!知能指数アップ・睡眠の質も向上!?

    DHAやEPAは、ヒトにとって4段階で役割があるとされています。

    (1)乳児期から幼児期にかけては、脳の発達・視覚への発達に。(2)学童期から思春期にかけては、アレルギー疾患の予防・改善に役立ちます。(3)また成人期から中年期にかけては、生活習慣病の予防改善・虚血性心疾患の予防・関節リウマチの予防改善・骨強化作用が、(4)そして中年期から高齢期にかけては、精神疾患・脳卒中・認知症の予防改善に役立つとされているのです。

    母乳にも含まれている!赤ちゃんにも必須なDHA

    乳児にとって最適な栄養源である母乳にも、不飽和脂肪酸としてDHAが含まれています。つまり私たちは、生まれた時からDHAを必要としているのです。

    イギリスの栄養学者であるMichael Carwford(マイケル・クロフォード)教授は、著書「The Driving force」の中で、

    ”日本人の子供が欧米人と比較して知能が高いのは、日本人が魚を多く食べてきた歴史的な食習慣に起因しているかもしれない”

    と述べています。

    実際に日本は、オーストラリア、アメリカ、ドイツの母親の母乳中におけるDHAの割合と比べ、他の国よりも2~3倍の高値を示していたのです。昔から魚を食べる文化のある日本だからこその結果と言えるでしょう。そう考えると「魚離れ」は、私たち親にとっても心配なことではないでしょうか。

    DHA含有の粉ミルクより、母乳を選びたいワケ

    魚食を主としない欧米の国の母乳にもDHAが認められることから、DHAは乳児にとっても重要な栄養源であることがうかがえます。

    イギリスMRC栄養部のAlan Lucas(アラン・ルーカス)氏らは、母乳と粉ミルクで育てた未熟児が8歳になったとき、彼らの知能指数を比較してみました。
    この調査では、母乳で育てた未熟児の知能指数が、粉ミルクでの育児に比べて10ポイント高いことが報告されています。

    さらに、アメリカ・ペンシルベニア大学のJianghong Liu(ジャンホン・リウ)氏らによる研究では、週に1回以上魚を食べる子と食べない子を比べたところ、魚を良く食べる子はよく眠ることができ、知能指数のテストでもより高い点数を記録したのです。
    また、魚をよく食べる子供は、夜中に目が覚めてしまうといったケースが少なく、全体的な睡眠の質も高いことがわかりました。

    年齢の低いうちから、子供の食生活に魚を取り入れることが推奨されるのにも納得です。

    島国なのにもったいない!魚離れする日本人

    厚生労働省のHP内「国民健康・栄養調査報告」の中の「年齢階級別 1人1日当たりの漁獲類・肉類の摂取量」を見ると、調査しているここ9年間で、かつて見られなかったほどの魚離れが顕在化していることがわかります。

    例えばこれまで、19歳までは肉類の摂取量が多く、20歳以降では魚介類の摂取量が多くなることが特徴となっていましたが、40代でも魚介類よりも肉類の摂取量が多く、50代以降でも魚介類が大きく減少しているのです。
    また「家計調査年報」でも、1人1年当たりの購入量を見てみると、

  • 昭和40年……生鮮肉類・約6kg、生鮮魚介類・約16kg
  • でしたが、

  • 平成17年……生鮮肉類・約12.6kg、生鮮魚介類・約12.7kg
  • と逆転しそうな勢いです。特に、若年層の魚介類の購入量の減少が著しいことが明確になっています。

    どうして魚離れが起こっているの?食べなくなった理由とは


    日頃の食卓で「肉料理のほうが多い」と回答した約56%の「肉料理派」に対し、その理由を調査したところ、「同居の家族が魚介類を好まないから」という答えが約3割を占めました。一方「魚介料理のほうが多い」と答えた人は全体の約11%と、圧倒的に肉食派が多数を占めています。

    肉料理を好む人が増え、魚離れが起こってしまったのはなぜなのでしょうか。

    子供の「魚嫌い」を許容したメニュー構成

    「同居の家族が魚介類を好まないから」という回答にて、その同居家族が「子供」とした人が68%を占めており、魚介類が嫌いだという子供が増えてきていることがわかります。

    例えば、小中学生に給食で嫌いなメニューについて調査したところ、「魚全般」という答えが1位という結果に。食料支出額に占める魚介類と肉類の割合を調べたデータでは、「高齢者のいる世帯」や「夫婦のみの世帯」と比べ、「夫婦と子供2人の世帯」は肉類の割合が多く、魚介類の割合が少ないことが明確になったのです。

    「嫌いなものは無理に食べなくても良いから、残さずたくさん食べてくれる食材で献立を組む」、そんなご家庭の方針も関係しているのかもしれません。

    肉類の方が魚よりも安いから

    肉類は30年前ほど前から「160円~180円/100g」ほどと安定しているのに対し、生鮮魚介類は価格の上昇が続いています。それは1匹魚の形のまま販売せず、切り身や刺し身など加工された状態での提供が多くなったことから、加工コストが生じているのも原因のひとつとして挙げられるでしょう。

    重さで比べてみても、魚介類には頭や骨、内蔵など食べることができない部分が含まれるため、食べられる部分の重さで比較すると肉類よりも高くなってしまうのです。

    「肉料理のほうが多い」と答えた理由の8位に「ボリューム感がない」という回答もあります。切り身や刺し身などは高価なので少量しか食べることができないという割高感が、魚離れを助長している原因になっているようです。

    魚はニオイがつくし、調理も後片付けも面倒!

    魚を食べる家庭であっても「魚介料理は調理が面倒」という理由で魚介料理をしたくない家庭も増えています。

    焼き魚では「魚焼きグリルを洗うのが大変」という意見や、「魚の骨を取り除くのが面倒」という回答が多く聞かれました。「魚のニオイを部屋に残したくない」といった回答も多く、魚の調理に対して消極的な回答が多く見られたのです。

    また農林漁業金融公庫の調査によると、30代主婦の7割は魚をおろすことはせず、切り身など加工後の魚しか購入しないことがわかっています。「そもそもおろし方がわからない」という方や「片付けや料理が面倒」という理由です。
    また、共働き世帯の増加に伴い家事時間が減少していることも手伝って、調理や片付けに手間や時間がかかる魚介類は敬遠される結果になっているようです。

    病気予防に魚を食べることの大切さーー食べない人は死亡リスクが2倍に!?

    魚を食べない食習慣を続けた場合に想定される「健康上のリスク」がクローズアップされています。同時に、魚を食べることで得られる予防効果についてもさまざまな研究で明らかになっているのです。

    ここでは、魚を食べることと健康面についての関係を見ていきましょう。

    魚を食べないことによるリスクとは?

    国立がん研究センターの井上真奈美部長や、筑波大学の山岸良匡准教授らの研究グループでは、魚をほとんど食べない人は大動脈疾患による死亡率が増加することを世界で初めて明らかにしました。

    大動脈疾患とは「大動脈解離」と「大動脈瘤」のことを指しており、大動脈が”こぶ”のように病的に膨らんだ状態を指します。気づかれないまま”こぶ”が大きくなって破裂すると大量に出血し、急速に危篤状態に陥るため、緊急手術でしか救命できなくなるのです。かつて日本での死亡率は多くありませんでしたが、近年はやや増加傾向にあります。

    全国8箇所の研究グループ(累計36万人)の食習慣アンケート結果より、魚を食べる頻度を「ほとんど食べない」「月1~2回」「週1~2回」「週3~4回」「ほとんど毎日」の5群に分けて調査した研究があります。
    その結果、「週1~2回」と「ほとんど食べない」を比べると、大動脈疾患によって死亡するリスクが1.9倍高いという結果が出たのです。また、「月1~2回」と「週1~2回」を比べた際、大動脈解離で死亡するリスクの上昇はみられませんでしたが、大動脈瘤ではややリスクが上昇する傾向がみられました。その一方、「週3~4回」と「ほとんど毎日」では、リスクの大きさは変わりません。

    この研究結果によって、魚の摂取が極端に少なくならないことが大動脈疾患死亡を予防するために重要だと考えられます。

    病気の予防に役立つ魚食

    上記の研究で上げた大動脈疾患は、動脈硬化や高血圧、高脂血症や糖尿病などさまざまな要因が関係すると考えられています。こうした生活習慣によって引き起こされることが多い「生活習慣病」といわれるものは、昨今、若年層の患者数が増加していることが社会的な問題にもなっているのです。

    1971年に行われたBang(バン)教授やDyerberg(ダイアーバーグ)教授らによる「イヌイット」の疫学調査では、コレステロールや中性脂肪等の血中脂質が低いこと、糖尿病や乾癬の羅患率が低いことが示され、魚油脂質の生体に及ぼす効果に多くの研究者が関心を寄せました。
    その結果、DHAやEPAの作用について多くの研究が発表され、

  • 認知症予防
  • 脳梗塞など脳卒中予防
  • 虚血性心疾患の予防
  • 抗動脈硬化作用
  • 脂質異常(高脂血症)改善
  • 降圧作用
  • 血糖値低下作用
  • など、生活習慣病の改善につながる効果が報告されています。

    実際にコレステロール値や中性脂肪が健常人の上限を超えた被験者に対し、DHAやEPAを摂取して変化を見たところ、数値は上限以下になり、血圧も10%低下するなど効果が見られました。そして、試験の1年後に再び検査した際には、コレステロール値や中性脂肪、血圧とも元の状態に戻ることが明らかになったのです。
    こうした実験から、生活習慣病の予防としてDHAやEPAを摂取する場合には、継続的な摂取・もしくは魚介類の習慣的な摂取が必要ということが明らかになりました。

    若年層で予防するためには、子供の頃から習慣として摂取しておくことが推奨されます。

    魚を使うのが難しいときーーDHA・EPA配合の製品を活用しましょう!

    まず、どのくらいのDHAやEPAを摂取したら良いのかをチェック!

    厚生労働省が「日本人の食事摂取基準」(2015年度版)において、

    ”n-3系脂肪酸(EPA及びDHA)を1g/日以上摂取することが望ましい”

    としています。

    日本食品標準成分表(2015年度版)で確認すると、最もDHAやEPAを多く含む魚は「マグロ(トロ)」。含有量の多い順でみると、100g当たりそれぞれ

  • マグロ(トロ)……DHA3.2g、EPA1.4g
  • サンマ……DHA1.7g、EPA0.89g
  • サバ……DHA0.7g、EPA0.5g
  • となります。

    実は、魚の大きさや港、時期などのさまざまな要因によって、DHAやEPAの含まれる量は大きく変化してしまいます。そのため、魚で1g以上摂取できているかどうか確認するのは難しいものなのです。さらに含有量が多いとされる青魚を毎日食べるのも、実際には難しいことではないでしょうか。

    そこで、特定保健用食品や栄養機能食品、機能性表示食品など、栄養機能が表示できる保健機能食品を活用してみるのはおすすめです。サプリメントでなく食材であるため料理の中に加えることができ、取り入れやすいでしょう。

    一品プラス・一品置き換えで手軽にDHA、EPA!

    例えば、朝食に食べているウインナーを、DHAやEPAが含有されているフィッシュソーセージへと変えてみるのはいかがでしょうか。

    ニッスイから販売されている「毎日これ1本 EPA+DHA ソーセージ」では、1本(50g)に1,050mgのDHA・EPAが含まれており、これ1本食べるだけで補うことが可能です。

    また、マルハニチロの「DHA入りリサーラソーセージ」には、1本(50g)にDHAが850mg、EPAが200mg含まれています。卵焼きで巻いたり、スープに入れるなど、手軽に食べられる点で人気です。

    ニッスイの「イマークS」は、ヨーグルト風味の清涼飲料水として1本(100ml)飲むと、EPAが600mg、DHAが260mg摂取できます。また、熱量が26kcalと低いので気にせず飲むことができる点からも人気があります。毎日ヨーグルトやヨーグルトドリンクを飲んでいる方は、置き換えてみるのも良いかもしれません。

    さて、上記の食品やサプリメントを使えば栄養面では十分に摂取できますが、せっかく海に囲まれて1年を通し美味しい魚介類を食べることができる日本に住んでいるのに、海の美しさや魚の美味しさを感じないままでいるのはもったいないこと。魚離れから魚嫌いになってしまうのは、食育という観点からみると良いことではありません。
    ひいては、子供が親になったとき、自分の子供に魚を食べさせることについて、そもそも考えることすらなくなってしまう恐れも……。

    補助食品はあくまでも補助として、プラス1品・1品置き換えとして手軽に摂取する手段とするにとどめるのがベター。美味しい魚を食卓に並べ、魚を身近な食材として習慣的に食べることが重要です。

    まとめ

    子供の魚嫌いから魚の摂取量も少なくなり、そのためか子供向けのDHAやEPAサプリメントがいくつも販売されています。
    補助的に食品やサプリメントなどで補助するのは良いことですが、なるべく季節に合わせて脂ののった美味しい魚を子供に食べさせ、魚の美味しさを伝えること、そして魚を食べる習慣を身につけることは重要です。

    時間的に魚の調理が難しいご家庭もあるかと思いますが、骨抜きの魚の煮付けなどがスーパー等で販売されています。また、片付けが簡単な魚用の調理器具など、便利なキッチンアイテムも登場しています。便利なキッチツールについては、いずれ記事で特集したいと思います!

    できるだけ自然な食習慣として魚を食べれるよう、心がけてみましょう。

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    【参考・引用・関連リンク】
    ■水産庁 平成30年度水産白書
    https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h30_h/trend/1/t1_3_4_2.html

    Jianghong Liu(2017)The mediating role of sleep in the fish consumption – cognitive functioning relationship: a cohort study, Scientific Reports 2017,DOI:10.1038/s41598-017-17520-w

    クリックしてsleep-and-fish-consumption-chines-children-1.pdfにアクセス

    ■朝日新聞デジタル「魚食べない人は死亡リスク2倍に 大動脈の病気で差」
    https://www.asahi.com/articles/ASLBL3H3RLBLULBJ004.html

    ■国立がん研究センター・筑波大学
    「魚をほとんど食べない人で大動脈疾患死亡が約2倍に増加」

    クリックして181015yamagishi-3.pdfにアクセス

    https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/1015_02/index.html
    Fish intake and risk of mortality due to aortic dissection and aneurysm: A pooled analysis of the Japan Cohort Consortium
    (魚摂取と大動脈解離・大動脈瘤死亡リスク:Japan Cohort Consortiumにおける統合解析)

    H.O.Bang, J. Dyerberg, and A. Nielsen(1971),Plasma lipid and lipoprotein pattern in Greenlandic West-coast Eskimos. Lancet, 1,1143-1146
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673671916588

    魚食とDHA・EPA 水産振興 第585号平成28年9月1日発行

    クリックしてSuisanShinkou_585.pdfにアクセス

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