小児眼科の代表的な病気である「斜視」は、日本の子供の人口2%に見られます。実は比較的起こりやすい病気で、自身の子供の”視線”が気になっている親御さんは少なくないようです。

「少し気にはなるけれど、もしかしたら杞憂かもしれない。病院へ行くべきなんだろうか……。」
そんなふうに悩んでいる方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。斜視になってしまう原因から、一時的である場合と治療が必要である場合との見分け方、また治療法について解説していきます。当てはまる部分があるかどうかチェックしてみましょう。

※実際の診断・治療は必ず眼科専門医にご相談ください。

【原因】斜視になるのはなぜ?原因別に解説!

屈折異常や調整機能の働きで起こる斜視を「共同性斜視」と呼び、頭の怪我や脳の病気、外眼筋で起こる斜視は「麻痺性斜視」と呼ばれています。特に子供に起こる斜視のほとんどは「共同性斜視」です。

ところが、乳児から小児期に見つかる斜視の多くは、原因不明なものが多いと言われています。

この章ではまず、斜視になる原因のうち考えられる要因を、種類別にご紹介します。

《筋肉や神経の病気》である場合

通常、両眼の眼筋は、微妙に調節しながら見たいところへと焦点を合わせるために眼球を動かしています。しかし、眼球を動かす筋肉や神経に病気があると、眼球が動かなくなって目の位置がずれてしまうのです。

これはおもに、眼筋の神経支配の異常、眼筋そのものの異常、眼筋付着郡の異常などが原因で起こります。先天性の場合もあるため、赤ちゃんの頃から観察が必要です。

《遠視》が原因である場合

近いところを見る際のピント調整時には、両目の眼球は内側に寄るものです。しかし遠視の場合、近くを見ようとすると調節の力が普通の方よりも強く働いてしまいます。特に強い遠視を持っている場合には、目がかなり内側に寄ってしまい、その結果として内斜視が発症してしまうのです。

この”調整”が原因である斜視は「調節性内斜視」と呼ばれます。子供の斜視の原因として多いのが、この遠視が原因となる斜視です。

両眼視の異常

両目を使ってモノを一つにみる働きを「両眼視」と呼びます。赤ちゃんの頃からモノを見ることで自然と訓練されていくもので、生後1年位で出来上がり、6歳位で完成されると言われています。

しかし、生まれつき両眼視ができない場合や、発達の途中で両眼視がうまくいかない場合、斜視へとなってしまうことがあるのです。弱視(近視や遠視など視力が悪い状態)も、両眼視に異常がある場合が多くあります。

視界不良

片目や両目が、病気または怪我によって視力が落ちた場合にも、両眼視がうまくできなくなってしまうことがあります。おもに視力が悪い目の方が斜視になり、その場合は外側を向きます(外斜視)。

別の病気が背景にあることもあるため、突然斜視になった場合には注意が必要です。

【治療】斜視の種類と治療法は?

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目のずれる方向によって、

  • 内斜視
  • 外斜視
  • 上斜視(下斜視)
  • 回旋斜視
  • と分類されます。

    ここではおもに、子供の発症率の高い斜視の種類についてご紹介します。

    まずは知ろう、斜視の種類

    斜視とはおもに、眼球の瞳の位置がずれていることを指しますが、向く方向で名称が変わります。

    目が内側に寄るのを「内斜視」、逆に外を向いているのを「外斜視」と言い、これらは一般的によく見られる症状です。

    「上・下斜視」は、片方の目が上または下を向いていることを指します。「交代性上斜位」は通常の上下斜視とは異なり、片方の目を交互に閉じると、閉じた目が上転する特異な眼球運動であり、種々の斜視に合併してみられるものです。

    さらに、常に斜視になっているのを「恒常性斜視」と呼び、ときどき斜視にあるのを「間歇(かんけつ)性斜視」としています。

    筋肉や神経の病気には、手術治療が行われる

    目の周りに付いている筋肉(外眼筋)を調整して目のずれを治すためには、手術が必要です。生後1ヶ月~6ヶ月頃に発症する乳児(先天)内斜視は眼位ずれが大きいので、眼位をまっすぐにする手術を行います。

    間欠性外斜視では、偏位量(眼球のずれ)が小さい場合、プリズムを使った光学的療法や視能訓練などを行いますが、偏位量が大きい場合には手術が行われます。おもに眼球に付いている目の筋肉をずらす「後転法」か、目の筋肉を縫い縮めて眼球の位置を前方にずらす「前転法」が施されます。

    手術自体は1時間もしないで終わる事も多いのですが、子供であれば多くの場合、全身麻酔で手術が行われるため、数日間の入院が必要です。

    遠視など視力が伴う場合には、メガネ矯正

    遠視をはじめ、近視や乱視をともなった斜視の患者には、メガネを使った治療を行います。特に1歳半~3歳までの発症が最も多い、遠視で起こる調節性内斜視の場合、多くの方が遠視の矯正めがねをかけることで眼位ずれ(目の向きのずれ)がなくなり、斜視が軽くなります。

    しかし、斜視がなくなっても遠視が治癒するわけではないため、メガネかコンタクトレンズの矯正はずっと必要になります。遠視の悪化を最小限に抑えるためにも、定期的に眼科の受診やメガネの調整などを行いましょう。

    両眼視機能の回復には、プリズムレンズ

    プリズムという樹脂でできた膜をメガネに取り付け、光を一定方向に曲げる作用を使って治療する方法があります。これにより、見える映像の位置を意図的にずらすことができるため、斜視による両眼の視差を正規の状態に限りなく近づけることができるのです。

    斜視そのものを治す治療法ではありませんが、両眼視機能の獲得を目指して使われている方法で、見た目にも正常な状態に近くなります。

    プリズムレンズは、目が疲れやすい大人にも人気のある技術です。

    あなたの子供は?子供にもっとも多く見られる「内斜視」

    子供に特に多く見られるのが「乳児内斜視」と「調節性内斜視」です。

    「乳児内斜視」は原因がはっきりとしておらず、「本態性乳児内斜視症候群」とも言われているように、さまざまな臨床的特徴を合併しています。より本来の目の状態に促すためには2歳までに手術を行うのが良いとされているため、早期発見が重要です。

    片眼が内側に大きくずれているのが特徴であり、あるときは右眼、あるときは左目というように、交代することも。両眼が外向きに動くことが少ないため、寄り目に見えるのも特徴です。

    生後6ヶ月を過ぎても視線が内寄りになっていると思われたら、迷わず眼科を受診することをおすすめします。また、弱視が生じている場合、弱視に対する訓練も必要になります。赤ちゃんの頃の写真を確認しながら判断する場合もあるため、子供の顔写真を撮っておくと良いでしょう。

    同じく子供に多い「調節性内斜視」は、遠視が原因となる斜視です。遠視がある中、はっきり見ようとしてピント合わせが過剰に働くことで斜視が発生してしまいます。特に近くを見る時に寄り目になることが多く、内斜視が発症してしまいます。

    これは、遠くを見たり、メガネをかけることで治ることが多いでしょう。治療の際には、眼の調整力を麻痺させる目薬を用いて眼の屈折度数を測定し、それに基づいて治療用のメガネを処方します。このメガネを使用していけば、1ヶ月~3ヶ月ほどで眼位が安定してきます。

    成長に伴って眼の屈折度数も変化するため、定期的に病院へ通い、メガネのチェックはかかせません。もし、メガネを掛け始めて3ヶ月以上経っても眼位ずれが残っている「部分調整内斜視」と診断された場合、角度が大きければ手術をすることもありますが、プリズムレンズを処方して両方の目で見る機能を養う治療も検討されます。

    【注意!】治療は”6歳まで”がポイント!いろいろな斜視を早期発見するために

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    赤ちゃんの頃は顔も小さく、黒目がちであることから、斜視でなくても斜視っぽく見えることがあるでしょう。それを知っているからこそ、特に眼科を受診されない方もいるかもしれません。
    しかし、実際に治療が必要であった場合、完治には早期発見・早期治療が絶対条件になるのです。

    特に乳児の場合、自分の眼の見え方が異常なのか判断できず、目が見えづらいなど訴えることはほとんどないため、親としても見落としがちになってしまいます。

    ここでは、斜視について早期治療が求められる理由と、早期発見のポイントについてご紹介します。子供の目の動きが気になる方は、ぜひ危機感を持ってみてください。

    乳幼児のうちに早期発見を!6歳までの治療が効果的

    眼科や斜視手術の第一人者であるドイツのGunter K. von Noorden(グンターK.フォンノーデン)博士によると、子供に多く見られる内斜視「乳児内斜視」の患者のうち、35%が「弱視」を持つとされています。

    岡山大学の平井氏も「30%が弱視である」と述べており、さまざまな研究者によって「弱視」の併発が約3割あるということが示されているのです。

    弱視は3歳までに発見できれば、遮蔽法などにより多くの子供の視力が回復するとされています。しかし、小学校へ入学してから治療をスタートした場合、どんな方法でもあまり回復の期待はできないとされています。目の発達は、6歳頃までには完成しているとされるためです。

    6歳までに治療を行えるよう、異変に気付いた時点で早急に検査を受け、治療をスタートしてください。

    常に斜視の状態「恒常性斜視」にならないように

    生後すぐから外斜視が出現している場合、外斜視と正常なときの2つの状態を併せ持っている「間歇性斜視(かんけつせいがいしゃし)」の状態から、常に斜視の状態になる「恒常性斜視」へと移行する場合があります。

    こうなると、視力が悪くなりモノが二重に見えるようになりますが、子供の場合、景色が二重に見えてしまう”複視”を訴えることが少なく、親は気づきにくいでしょう。そして、ずれた視界の情報を脳が削除し処理してしまうため、両眼視機能が低下してしまうのです。

    この場合、片眼のみで生活している状態になってしまい、立体視や3D(三次元)の感覚が消失してしまうので、ボール遊びや平均台などが苦手になります。日常生活への支障も懸念されるでしょう。

    また、右眼と左眼を別々に使うようになってしまうため、どこを見ているかわからない、といった対人的な問題にもつながっていくのです。

    こんなさまざまなデメリットを及ぼす「恒常性斜視」にならないよう、早期の発見と治療は大切です。子供の「目」だけでなく、普段の「動き」にも注目してみましょう。

    頭を傾ける「眼性斜頸(がんせいしゃけい)」にも注意!

    眼球を上下に動かす筋肉に異常が起こると斜視となり、両眼が同じ方向を見なくなってしまいます。そうなると、景色もダブって見えるように……。

    「眼性斜頸(がんせいしゃけい)」は、頭を無意識に傾ける症状があります。傾きの角度によっては、視界がダブらなくなるからです。

    診断がしづらく、病院でもこの頭の傾きを「クセ」として結論付けされてしまうことがあるため、長年放置され、あとになって”斜視が原因だった”と判明することも多いのです。

    子供が眼性斜頸になると、脊椎の異常な彎曲(わんきょく)や顔面非対称、左右の筋のアンバランスなど、発達の過程で目以外のさまざまな異常が発生してしまいます。そのため、頭を傾けるような仕草を頻繁に見るようになった場合には、ぜひ早急な受診をおすすめします。

    赤ちゃんの視線は内斜視に間違えやすい!

    赤ちゃんは鼻が低く、鼻の根元も十分に発達していません。そのため両眼の間が広くなり、内側の白目が見えない場合があります。寄り目のようにみえてしまいますが、実際には両眼の視線は揃っており、斜視ではない場合も多いのです。

    これは「偽斜視」と呼ばれ、眼科医でも区別が難しいことも。
    偽斜視であった場合には、赤ちゃんが大きくなって鼻の根元も成長すると、内斜視のようだった目元が正常に見えるようになってきます。

    6ヶ月未満の赤ちゃんについては、内斜視を必要異常に疑う必要はないかもしれません。

    早期治療のために検査をしてみましょう

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    生まれたばかりの赤ちゃんの場合、明るい・暗いといったことしかわかりません。生後2~3ヶ月頃に動くものを眼で追う「追視」を行うようになるなどの発達を経て、小学校就学ごろになれば、目が大人と同じくらいになると言われています。

    2020年2月現在、3才児検診では視力検査が行われますが、それ以前の年齢では実施されません。また、絵のカードなどを使った視力検査は、子供の機嫌や興味に寄って結果も左右されてしまうものです。

    病院では、赤ちゃんが生後半年になると眼科検診を受けることができるようになります。まずは、モノを動かして目で追っている状態や、光・またはおもちゃを一定のパターンで動かして見えているかどうか、また光に対する瞳孔反応などを確認します。そして、検影器と呼ばれる装置を使い視力の確認を、また検メガネという装置で眼底にある網膜や視神経の検査を行います。斜視の検査なども、必要に応じて行います。

    視覚スクリーニング検査(スポットビジョンスクリーナー)を導入している場合、たった数秒で近視や乱視、不同視、瞳孔不同といった検査ができ、これを1回500円ほどで受けることができます。乳児内斜視の場合は弱視になっている可能性も高いため、気軽に受けられると注目を集めています。

    お近くの眼科で導入されているかどうか、問い合わせてみてはいかがでしょうか。

    自宅で簡単にできる斜視チェック方法!

    子供が斜視ではないかどうか、自宅で手軽にチェックできる方法があります。それは、デジカメやスマートフォンのカメラで、子供の目をフラッシュで撮影すること。

    両眼の黒目の中の同じ位置にフラッシュの反射光がある場合、斜視ではない可能性が高いでしょう。反対に、外側や内側にずれている場合、内斜視や外斜視であるおそれがあります。

    目が疲れているときなどに斜視が起こる場合では、病院では斜視が出ないケースもあります。そのため、この方法を用いてときどきチェックしてみるのはおすすめです。

    まとめ

    赤ちゃんの頃の「偽斜視」は多く見られるため、2〜3歳に成長してもなお内斜視のように見える場合「まだ赤ちゃんの面影が残っているのかな」と楽観視する親は少なくありません。

    しかし、就学前に治療を始めなければ、完治が難しくなるのが「斜視」です。見た目は少しの違和感である軽度の斜視でも、顔だけではなく体のバランスにまで支障をきたすおそれがあります。

    3歳頃になってまだ子供の瞳の位置に違和感を覚える時には、ぜひ、カメラのフラッシュ撮影でのチェックや、診察を受けてみることを強くお勧めします。

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    【参考文献】
    von Noorden GK:A reassessment of infantile esotropia, XLIV Edward Jacson Memorial Recture:Am J Ophthalmol 105:1-10, 1998.

    平井美恵(2009)「乳児内斜視をもっと知ろう!」乳児内斜視ー視機能管理のポイントー, 日本視機能訓練士協会誌 第38巻,101-105

    【関連リンク】
    ■斜視治療のストラテジー ~症例検討で学ぶエキスパートの思考と対処法~ 三輪書店 佐藤 美保 (編集)

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