現在の野菜ジュース市場は右肩上がりで、各メーカーからたくさんの種類が販売されています。子供向けの野菜ジュースも見かけるようになり、野菜が苦手な子供にも習慣的に飲ませている家庭も多いのではないでしょうか。

しかし、はたして野菜ジュースは”野菜の代わり”になるのでしょうか。事実、野菜ジュースに頼りがちになることによるデメリットもあるようです。

この記事では、野菜ジュースは本当に身体に良いことばかりなのか、また野菜嫌いの克服に関するコツについても、さまざまな研究を元に解説していきます。

食卓からの野菜離れが深刻!子供が苦手な野菜ランキング


健康志向の高まりも相まって、有機野菜だけを揃えた八百屋さんも増えてきています。
ビタミンやミネラル・食物繊維を多く含み、さらに低脂肪と良いことづくしの野菜ですが、実は近年、食卓からの「野菜離れ」が加速しているのです。

最近では”ビーガン”という生き方の認知度も高まっている反面、なぜ野菜離れが深刻化しているのでしょうか。

「子供が嫌いな野菜」は、不動の◯◯!

カゴメ(株)による「カゴメ野菜定点調査2019」では、1歳〜高校生以下の子供が好きな野菜と嫌いな野菜について調査・発表しています。

これによれば2019年度、「好き」な野菜は

  • 1位 トマト
  • 2位 きゅうり
  • 3位 じゃがいも
  • となっています。一方、「嫌い」な野菜は

  • 1位 ピーマン
  • 2位 なす
  • 3位 しいたけ
  • という結果でした。
    過去3年間のデータを見比べてみても「嫌い」な野菜の1位と2位は変わらず、2年前の3位が「ネギ」というだけでほぼ同じ結果です。

    「野菜が嫌いな原因」については、1位の「美味しくないから」という回答に続き、2位「青臭いのが苦手だから」という回答が3年間で9.6%上昇。さらに3位の「食感が苦手だから」という理由も年々上昇しています。

    この調査のなかで、野菜の摂取方法に関する大人からの回答は、1位が「炒め料理」、2位「サラダ(生野菜)」となっており、野菜そのものの食感を残した調理法が多用されていることもわかっています。

    子供の野菜への苦手意識は、”大人の都合”が少なからず影響しているのかもしれません。

    食卓に並ぶ野菜が減少……子供も野菜不足に

    ここ30年の統計を見てみると、家庭での野菜消費量は減り続けており、食卓に並ぶ野菜は実際に少なくなっています。

    農林水産省による「食料需給表」によると、平成5年は一人当たり104kg/年の野菜消費量でしたが、平成28年度は89.9kg/年と、年間15kg近くも減少。
    また、同じく農林水産省による「平成29年国民健康・栄養調査報告」から子供の野菜摂取量をみてみると、

  • 1歳~6歳……144.7g/日
  • 7歳~14歳……247.7g/日
  • 15歳~19歳……252.0g/日
  • となっています。

    摂取目標は350g/日となっている中、大人でも摂取量は平均276.1g/日。子供が大人より食べる量が少ないことを考慮したとしても、野菜の摂取量は足りていないのです。

    では一体、私たちの野菜不足の原因はなんなのでしょうか。

    野菜摂取量の減少は「家庭環境の変化」?

    カゴメ(株)では「大人における野菜摂取のカベ」についてのアンケート調査も実施しています。その結果によると、3年連続1位となったのは「野菜を調理する時間がないから」という理由でした。

    特に共働きの場合、帰宅後から夕食までの時間も短いため、手短なもので済ませてしまう家庭が増えています。野菜は切ったり茹でたりと調理に手間が掛かることがあり、使用量が減ってしまっているようなのです。2位に「野菜を調理するのが面倒だから」という理由がランクインされているのも納得ではないでしょうか。

    3位には「一度にたくさんの量を食べられないから」という意見があります。実際に野菜100gを摂取しようとすると、確かに結構な体積が必要となるでしょう。

    5位には「野菜の価格が高いから」という理由が。野菜を数種類集めバランスよく食べようとすると、一度の会計で結構なお値段になるのも、主婦なら実感しているかもしれませんね。

    さらに、買ったばかりの新鮮な野菜も、全て使い切るまでに日数がかかれば味や栄養価を損なわせたり腐らせてしまったりすることもあるかもしれません。そのため野菜はまとめ買いに向かず、定期的な購入が必要となります。
    こうした”割高感”も、食卓から野菜を遠ざけてしまっている原因のひとつといえるでしょう。

    4位には「自分では今の量で十分だと思っているから」という回答が挙げられており、大人自身が野菜不足だと思っていないということも明らかとなっています。

    子供の”骨密度”が危ない!野菜を食べないことによるデメリット


    三育学院大学の垣本教授らによる調査において、体質的に不安定な幼児や身体的に不健康な児童は、体質的に安定・身体的に健康な児童に比べ《野菜嫌い》の傾向を示した結果が明らかになっています。

    ここからは、こんな「野菜を食べないことによって生じてしまうデメリット」についてご紹介します。

    消化器官への影響も……《便秘》に注意!

    垣本教授ら研究のでは、18~19歳の女子短期大学生120名を対象とし、野菜類14品目による嗜好度とそれにともなう身体への影響を調査したデータがあります。これによると、野菜類の嗜好と身体に現れる自覚症状とは密接な関連を示し、野菜嫌いの傾向を示した者は身体的自覚症状が多いという結果となりました。

    この身体的自覚症状として最も主となるのが「便秘」です。

    浅野誠一氏他による食物療法事典(同文書院)によれば、便秘になると

  • 食欲不振
  • 胸やけ
  • 頭痛
  • めまい
  • 易疲労性(いひろうせい)※通常より疲れやすい
  • 不安
  • 不眠
  • などの身体的及び精神的症状がみられるとこのことです。

    ビタミンやミネラルなどの栄養素は他の食品摂取による栄養交換が可能なため、ほとんど問題として挙げられていません。しかし野菜類は、他の食物では得にくい食物繊維を多く含みます。この食物繊維の不足によって、便秘を引き起こすことが明らかとなっているのです。

    実際、今回の野菜の嗜好と便秘について検討したところ、便秘症群が非便秘症群に比べて野菜嫌いの傾向を示しました。

    このように、野菜を積極的に食べていない人には便秘を主とする症状が多く現れており、これは幼児を含む子供にも同様に症状として現れていることが予測されます。

    野菜不足による《骨密度の低下》も懸念

    国立栄養研究所調査統計部が、東京都内と静岡県農村部に住む6~15歳の男女計760人を対象に、体型の計測や手指骨のレントゲン撮影、そして栄養摂取量について学年別にサンプリング調査しました。

    ここでは、農村部に住む学童の骨密度が、都市部に住む学童に比べ有意に低い結果が明らかとなりました。栄養摂取状態を比べてみたところ、「ビタミンA」「ビタミンC」「カルシウム」の摂取が、所要量と比較して著しく劣っていたことがわかったのです。

    意外かもしれませんが、実は農村部では、都市部と比べ栄養摂取状態が劣っていることが多くみられます。多種多様な食物の選択肢があり、平均所得も高く、健康志向に対する意識の高い親の多い都市部に比べて、農村部に暮らす子供が摂取している栄養価には差が生じてくるようです。

    骨密度は、ビタミンAとの有意な相関があることは広く知られています。ビタミンAはレバーをはじめとする肉類などでも摂取できますが、最も効果が高いのはβカロチンです。βカロチンは人参をはじめとする緑黄色野菜に含まれています。
    また、骨密度に大きく影響するカルシウムは吸収率が低いのですが、その吸収をビタミンA、C、Kが高めてくれるのです。

    疫学の分野においても、野菜を積極的に摂るという食生活の改善によって骨密度の低下をある程度抑制できることが、数々の研究からわかっています。
    健康な骨を維持する上で、野菜は重要な食材なのです。

    ズバリ!野菜不足は野菜ジュースで補えるのか?


    野菜そのものは高いので、子供には毎朝野菜ジュースを飲ませている。野菜は食べてくれないけれど、りんご味の野菜ジュースなら飲んでくれる。カレーを作るときなど、料理に野菜ジュースを混ぜることで野菜不足を補っている。そんな方は意外に少なくないかもしれません。

    しかし、それで本当に野菜不足を補ったことになるのでしょうか?

    確かに野菜ジュースは、他の炭酸飲料や清涼飲料水などに比べ身体に良いイメージがあるのも事実です。ここからは、野菜ジュースが野菜そのものの代替になるのかについてみていきましょう。身体に良いと思っていた野菜ジュースの”デメリット”も解説していきます。

    野菜ジュースでは食物繊維が不足。便秘には効果なし!?

    野菜から摂取できる食物繊維は、健康の維持に不可欠です。ところが、野菜が原料である野菜ジュースには、食物繊維自体は含まれているものの「不溶性食物繊維」は取り除かれています。

    便秘改善に繋がる食物繊維は、水分を吸収して便の容積を増やし、それにより大腸が刺激されることによりスムーズな排便を促します。この作用が行われるのがこの「不溶性食物繊維」です。

    一方「水溶性食物繊維」は、昆布やわかめ、芋、果物、麦などに含まれる《水に溶ける食物繊維》です。便秘に関する効果を挙げるとすれば「発酵性」の部分ぐらいで、大腸内で発酵・分解されるとビフィズス菌が増えて腸内環境が良くなり、結果として整腸効果がある……というに留まるため、直接的な影響はありません。

    このように、野菜ジュースによって「便秘」を解消するための食物繊維を十分な量補うのは困難といえるのです。

    「咀嚼がない」のは大きな損害!

    野菜ジュースと野菜の最も大きな違いは、「飲みもの」であることと「食べもの」であることの違いです。
    野菜と同じ栄養素が含まれている野菜ジュースを飲めれば十分なのではないか、と考える方も多いのですが、実は「食べる」のに必要な「咀嚼(そしゃく)」という行為は、人間にとって非常に重要です。

    まず、野菜を咀嚼して食べることで口の中に唾液が広がり、それにより消化酵素が分泌されます。唾液には、歯を硬くしたり丈夫にしたりする効果、そして酸に対する抵抗力を高める効果もあります。また消化酵素が唾液と混ざると、胃腸の消化機能を助けることにもなるのです。

    さらに、咀嚼によって脳細胞が活発化するため脳の血流が良くなり、脳機能がアクティブな状態へと繋がります。脳の海馬という部分が活性化すれば、記憶力の向上といった効果も得られるのです。

    農林水産相が報告する”1回の食事での咀嚼回数”の調査によると、戦前の食事では1420回噛んでいたのに対し、現代の食事では620回となっていました。
    このように、ただでさえ減ってきてしまっている咀嚼を更に減らしてしまうことは、子供にとっても好影響というわけにはいかないのです。

    野菜ジュース”意外と糖分多い”問題。虫歯の割合もアップ!?

    「野菜ジュースの糖質について」港南台内科クリニック
    https://www.kounandai-clinic.net/20161124.html
    こちらのページをご覧ください。

    市販されているいくつかの野菜ジュースについて、どれくらいの糖質が含まれているか、栄養成分も含めわかりやすくまとめてくれています。
    思っている以上に糖質が多く含まれていることに驚くのではないでしょうか。

    味の好みや飲みやすさ、飲む人の目的や飲む量・飲む頻度など、それぞれですから、一概にどの商品が良い悪いということは判断できません。問題は「野菜ジュースだから身体にいい」だろうと自覚なく飲んでいることです。

    もちろん、炭酸飲料などに比べ野菜ジュースはヘルシーなイメージがありますし、実際にヘルシーな商品はいくつもあるでしょう。しかし、身体に良いからといって市販の野菜ジュースを大量に摂取することは、あまり推奨されるべきではないでしょう。

    特に飲みやすく工夫された野菜ジュースの中には、糖分や塩分、添加物が多く含まれていたり、ヘルシーと思っていても意外とカロリーが高い場合もあります。

    糖質に関して言えば、市販の野菜ジュース(200ml)には約10〜15g程度の糖質が含まれています。これは、量にしてガムシロップ約2個分。これをどう捉えるかは、野菜ジュースを取り入れる方の考え方にも左右されるかもしれません。

    野菜ジュースは適度な摂取を!見えにくい野菜ジュースのデメリット

    ほとんどの野菜ジュースには、野菜特有の青臭さやエグ味を打ち消すために糖質の高い果物を配合しています。例えば、伊藤園の「1日分の野菜」200mlには14.8gの糖質、カゴメ「野菜一日これ一本」200mlには13.7gの糖質が含まれています。

    一方、サラダによく使われるレタス100gの糖質は1.7g、トマト100gには3.7gと、ジュースの含有量に比べ非常に少ないのです。デルモンテ「食塩無添加野菜ジュース」とキリンビバレッジ「48種の濃い野菜」200ml中の糖質は、それぞれ8.1g、8.4gと先のメーカーに比べ低い数値となっていますが、それでも本物の野菜の糖質量には叶いません。

    健康な人でも食後の血糖値は上昇しますが、糖分を多く含む食事をとると血糖値が急激に上昇します。この高糖状態が続くと糖尿病へのリスクが高まるため、血糖値の急激な上昇を抑えることが求められるのです。

    健康のためには緩やかな糖質の摂取が望ましく、多くの糖質を含む野菜ジュースを頻繁に摂ることは控えるのが無難といえるでしょう。

    野菜を上手に克服しよう!野菜を使った調理の”コツ”

    フライドポテトは大好きだけど、ほうれん草が嫌い……など、子供は野菜によって好き嫌いに差があるものです。
    「親が子供の栄養価を考えて選んだ野菜は、子供にとって嫌いな物ほど食べさせたくなる傾向が強い」という調査結果があるように、子供の野菜嫌いに毎日のように悩んでいる方も多いでしょう。

    ここからは、子供たちが自ら進んで食べることができるよう、野菜を使った調理のコツをご紹介します。

    調理法や組み合わせで工夫をしてみる

    「すでに思いつく限りの工夫をしてきた」という方も多いことでしょう。
    ここでは、東京家政大学で調理学を専門とする土屋教授による研究結果を参考に、野菜を美味しく食べることができる方法についてご紹介します。

    まず野菜の下ごしらえについてです。皮付きの野菜を使う場合、加熱してから皮を取ったほうが、出来上がった野菜の旨味をより感じることができます。加熱すると中の水分がうまみと共に抜けてしまい、パサパサになって美味しさが減少してしまうのを防げるからです。

    そして下ごしらえをするときには、十分に水分を取っておくのもポイント。水分が残っていると出来上がった料理が水っぽくなってしまい、味付けや食感に影響が出てしまいます。

    また、野菜を克服するためには、必ずしもそのものの状態で食べさせる必要はありません。
    ニオイが強い野菜は、野菜そのものを味わうのではなく、適度な香辛料や果汁などを使うのがおすすめです。隠し味程度に使用することでその香りに舌が慣れていき、最終的には形として出したときの抵抗感が和らぐことが期待できます。

    緑の野菜はベーコンやバターと炒めることで野菜以外の旨味に包まれて、さほど野菜の苦味を感じなくなります。

    野菜をデザートにするなら、綺麗な色は残しつつも形を全く変えることができるのでオススメです。人参ならば「ケーキ」が良いでしょう。ホットケーキミックスにおろした人参を混ぜて、炊飯器で焼くのが簡単な方法。人参のニオイが苦手な場合は、レモンやシナモンなどを入れるより、オレンジソースをかけると人参臭さを全く感じずに食べることができます。

    ほうれん草なら「クッキー」や「蒸しパン」がオススメ。ケーキにすると生臭さが残ってしまうでしょう。トマトは「ムース」にすると、苦手と感じやすいトマトの特徴を打ち消しつつおいしく食べることができます。トマトを湯剥きしてからヨーグルトでニオイ消しをすると、トマト臭さが減り食べやすくなるでしょう。

    他にデザートとして使いやすい野菜は「さつまいも」「かぼちゃ」「にんじん」「じゃがいも」などが挙げられます。甘みが強い野菜は、子供も好んで食べてくれるようです。

    まとめ

    普段不足している栄養素を補うことが手軽にできることから、大人から子供まで多くの方に飲まれ続けている野菜ジュース。しかし、実物の野菜でしか摂れない成分もあるため、完全に野菜の代わりになることはできません。

    野菜ジュースをうまく活用しながらも、子供が野菜を好きになれるよう多角的なアプローチを続けていきましょう。

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    【参考文献】
    カゴメ野菜定点調査2019
    https://www.kagome.co.jp/statement/syokuiku/knowledge/research/teiten03/

    農林水産省 食料需給表
    https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/zyukyu/

    厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査報告
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/h29-houkoku.html

    垣本充(1977) 食品嗜好性の精神身体医学的研究 ―短期大学生の野菜類嗜好について―, 栄養学雑誌 Vo1. 35 No. 3 137~142
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi1941/35/3/35_3_137/_pdf/-char/ja

    長嶺 晋吉他(1976) 日本人学童の骨密度と栄養摂取状態に関する研究, 栄糞学雑誌 V01. 34 No. 6 251~256(19
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi1941/34/6/34_6_251/_pdf/-char/ja

    土屋京子(1994)幼児が食べやすい野菜使用のおやつについて, 東京家政大学研究紀要 第34集(2),P.63~71
    https://tokyo-kasei.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=10545&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

    小坂 崇之(2013) 偏食克服を目的とした食育シリアスゲーム「Food Practice Shooter」, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2013論文集, P47-50
    https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=95969&item_no=1&page_id=13&block_id=8

    【関連リンク】
    ■「栄養たっぷり野菜ジュース100」植木 もも子(著) 主婦の友社

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