最近、子供の運動する時間が短いことが問題となっています。幼少期の運動習慣は、大人になってからもさまざまな影響があることが、多くの研究によって認められているのをご存知ですか?

この記事では、幼少期に運動をやっておくメリットや、おすすめの運動などについてご紹介します。ご自身のお子さまが、充分な運動量を取れているか不安な方は必見です!

運動する機会が減っている現代

文部科学省の調査では、40%以上の幼児において外遊びが”1日1時間未満”という結果があるなど、子供たちの運動する機会が減っていることが指摘されています。
その背景には「遊び場の減少」がみられ、公園でも「ボールの使用禁止」や「遊具の撤去」があるなど、昔のような環境で遊ぶことができなくなってきています。

日本小児保険協会の調査によると、約4割の幼児において、近所で安心して遊ぶことができる環境が整っていないことが判明しています。核家族化や共働き家庭の増加で、大人が見守りながらのびのびと遊べる時間が取りにくくなっているのです。
また住宅の密集などから、地域住人への配慮を考え、子供の遊びまわる「声」を遠慮するような動きもあります。

このように、周りの環境が原因となって運動量が減少するなど、自発的な運動をする機会や時間が減ってきているのです。さらに現代は、ポータブルゲームや動画視聴などが手軽にどこでも楽しめることから、外遊びや運動するという「習慣」自体が減ってきているのも現状です。

運動不足は子供にどんなデメリットをひきおこす?

運動不足は、子供にとってどんなデメリットをもたらすのでしょうか。実は、幼児期の運動不足は《大人になってからの影響》が怖いのです。

「動的バランス能力」の未発達につながる

バランス能力が低下することによってまず目に見えるデメリットは「姿勢が悪くなってしまう」ことです。姿勢が悪いと、腰などの疼痛の原因になります。さらに、転倒するリスクが高まってしまう、目が悪くなる……など、姿勢が悪いことによる影響はやがて身体全体へと広がるでしょう。

運動不足によるバランス能力の未発達は、社会問題として危惧されています。とくに「動的バランス能力」という”平衡を維持する運動能力”は、非常に重要な姿勢制御能力です。
この「動的バランス能力」が低い大人は、児童期における運動不足が影響することを、岐阜大学の窪田氏の研究が明らかにしています。

窪田氏は、大学生214名による動的バランス能力を測定し「児童期のスポーツ少年団および運動系のクラブチームへの所属」や「児童期における主な遊び場」との関連性を調査しました。これによると、児童期にスポーツ少年団および運動系のクラブチーム所属グループの方が、非所属グループよりもバランス能力が有意に高い数値を示しました。
そして、外遊びを好んだグループは、室内遊びを好んだグループよりもバランス能力に有意な高い値を示したのです。

バランス能力に重要な「神経系」の成熟は、12歳でほぼ100%の成長を遂げることが報告されています。幼少期に身体動作を伴う遊びや運動が、人間にとって非常に重要であることが、さまざまな研究者により明確にされているのです。

運動有能感が低下し、無力感を高めてしまう

「課題をうまく達成できる」「他者と比べて良い成績である」といったポジティブな結果は、課題の動機や後のパフォーマンスへの向上に結びつくことが、デンバー大学Hurter(ハーター)博士らの先行研究において明らかになっています。
この結果によると、

  • 「身体能力差の認知(自分はできるんだという自信)」
  • 「統制感(努力すればできるようになるという自信)」
  • 「受容感(指導者や仲間から認められているという自信)」
  • といった運動に対する「自信」を持つことで、子供は運動が好きになるとされています。日常生活においても自信を持ってさまざまなことがおこなえるようになることから「主体的な行動」にもつながっていくのです。

    例えば「足が遅くて人前で走るのが嫌だ」というネガティブな感情は、他の運動にも関連してしまい、さらには運動以外にも無力感が出てやる気が低下してしまうことが懸念されます。

    運動をする機会を幼少期から与え、自分の運動能力に自信を持てるよう、一緒に楽しみながら心身ともに鍛えておくのは非常におすすめです。

    「運動神経」向上だけじゃない!6歳までに運動させることによる、たくさんのメリット

    人間の身体の神経機能は、6歳までに全体の80%ほどが発達するとされています。そのため、幼児期の運動は運動神経が向上するのに重要です。
    幼児期から外遊びや体を動かす遊びの頻度が高い子供ほど「体を動かすことが好き」と答えた割合が高く、大人になってからも、運動が身近な存在となっているのです。

    ここからは「幼少期の運動」が、子供の人生に及ぼすメリットについてご紹介します。

    体力の向上

    スポーツ庁が平成28年度におこなった調査によると、幼児期(未就学時)に外でよく遊ぶなど「運動を日常的に行っていた小学生(6歳~11歳)」は、日常的に身体を動かす習慣が身についており基本的な”体力が高い”ことが確認されました。
    週6日以上外遊びをしていたグループと、週に1日以下で外遊びをしていたグループとでは、体力テストの合計点数に大きな差が表れたのです。

    幼児期に日常的に外で身体を動かした習慣が、小学校に入学した後も運動習慣として残り、それが体力向上につながっているようです。

    社会適応力が高い、意欲的な子供に!

    女子栄養大学の金氏は、幼児期に「運動や遊びなどで体を動かすことが好き(日常的に運動をしていた)」と答えた小学生と、そうではない小学生の比較調査をしました。
    それによると「外遊びが好き」と答えたグループは、小学校での「生活状況」がより良好であるという結果が得られました。

    この「生活状況」とは

  • 学校が楽しい
  • 勉強が楽しい
  • 休み時間に友達とよく遊ぶ
  • 学校の体育が好き
  • なかよしの友達が多い
  • といった項目となっています。

    ルールがあるスポーツや遊びを通して「友達との社会性」が自然と育ち、コニュニケーション能力が高まると考えられます。また、積極的に体を動かす幼児は前向きな性格傾向になるという調査結果も。

    「勉強や体育が好き」といった”やる気”の高い子供になるのです。

    健康な体をつくる

    前項と同じ金氏の調査結果では「体を動かすことが好き」「外遊びが好き」と答えた子供と、そうではない子供について「体型」への有意差が得られました。運動が「好きではない」子供のグループは、肥満の割合が高い傾向にあったのです。

    幼少期から習慣的に体を動かしていた場合、小学生になっても体を動かしていることが習慣づいているため、自然と日常生活の中でも体を動かします。体を動かしたことでお腹も空き、食事を美味しく食べ、適度な疲労から充分な睡眠を取ることができます。
    こうした良い循環により規則正しい生活が身につくことで、生活習慣病の予防にもなる健康的な生活習慣が身につくのです。

    これは小学生の頃だけではなく、大人になってからの身体活動や健康状態にも影響があると言われています。

    認知的能力が育つ

    運動やスポーツは「状況を判断し、次の運動に向けて体を動かし、そして実行する」という一連の動作をおこないます。
    この動作は脳の多くの領域を使用することから「認知的機能の発達促進」に寄与すると言われています。

    例えば球技では、ボールの位置や方向・感覚・速さなどを脳で素早く把握し「どんな行動を取るべきか」という空間認識能力、そして判断力が求められます。運動を習慣的におこなうことで、脳が定期的にその情報を処理するため、認知能力を鍛えることにつながるのです。

    2011年の日本学術会議でも「状況判断や思考判断を要する全身運動は、脳の運動制御機能や知的機能の発達促進に有効であると考えられる」と述べられており、自然と身につく認知的機能は、勉強への関与が少なからずあるということがわかります。

    6歳までの幼児におすすめなのは?親子でできる運動

    幼児期の初期にあたる3~4歳は、運動を始めるにも重要な時期です。
    このころは身体に変に力が入るなど、自身で動きをコントロールできず、うまくできないこともありますが、適切に運動経験を積むことによってだんだんと上手に動けるようになってきます。
    また、バランスが取れるようになってきたり、用具をうまく使えるようになるなど、多様な動きをどんどん習得していきます。

    これまで見てきたように、幼児期の運動習慣はとても大切なものです。ここからは、幼児期の年齢別に、親子でできる《おすすめの運動》をご紹介します。

    「体位感覚」を経験する運動【3~4歳】

    自分の体がどのような状態であるかを把握し、どのように動けば”通常の状態”に戻ることができるかを考えて実行する能力を「体位感覚」といいます。
    自分の身体の動きをコントロールしながら、身体感覚・バランス能力を高めることができる運動はおすすめです。

    例えば「逆さ感覚」を養う活動は、

  • カエルの足打ち……しゃがんで、手前の床に手を広げて置く。手を床についたままジャンプして、両足の裏を合わせる
  • 逆さ壁倒立……いわゆる逆立ち。この年齢なら、壁に沿って。
  • 「回転感覚」を養う活動は、

  • 鉛筆回り……腕を頭上にまっすぐ伸ばして手のひらを合わせ、足もまっすぐにし横転
  • たまご回り……膝を抱えて横転
  • ゆりかご……背中を床にして、膝をかかえて揺れる
  • このような動きは広いスペースを必要とせず、家でも布団の上などでできるのでおすすめです。
    逆さと回転を同時に経験できる活動としては「前転」や「側転」があります。だいたい、5,6歳頃、徐々に習得していくでしょう。

    リズム動き【3~4歳から6歳ぐらいまで】

    「ホップ」や「スキップ」「ギャロップ」などの動きを取り入れ、体全体でリズムを体験・表現する活動を指します。これらの動きは頭も使うため、神経系が発達する3~4歳が最も習得しやすい時期となるでしょう。

    「ホップ」とは片足跳びのことであり、利き足で3回飛んだり、同じ足で10回飛ぶなどがあります。3歳など低年齢児には利き足3回を目標にし、5歳頃には8~10回、リズミカルに交互で飛ぶなど高度なホップは6歳など、年齢に分けておこなうのがおすすめです。

    「ギャロップ」は馬のような歩き方を指し、片足リードで歩きとリーブの組み合わせです。4歳くらいからスタートし、6歳ぐらいにしっかりできるようになると良いでしょう。
    「スキップ」は、リズミカルに左右交互のステップとホップの組み合わせでおこない、大人でもできない方が多い歩き方です。4歳ぐらいまでは、片足スキップなど初歩的なところからスタートし、5〜6歳にしっかりとスキップができるのを目標にしてみてください。

    筆者の子供たちが通う保育園でも「リズム運動」が取り入れられており、多種に及ぶ動きを毎朝おこなっています。ピアノの音楽に合わせておこなうリズム運動は、1歳児クラスからスタート。音のリズムを知ったり、ゆったり・またはキレのある動きなど、いろんなリズムで身体を動かすいい機会となっていると思います。

    リズム運動は動画サイトなどでもアップされているので、ぜひご覧になってみてください。

    道具を使った運動【4歳以降】


    道具の「操作」ができるようになる4歳以降には、ドッジボールやサッカーなど「ルール」があるスポーツがおすすめです。それまでは単にボール遊びなどでボールを追いかけていただけでしたが、ルールを理解し、戦術を自分で立てたりするなど、考えて運動をするようになります。

    しかし、最初からすべてのルールを理解するのは難しいので、子供の状況に合わせてルールを少し変えてみたり、新しい遊びにしてみるなど工夫をしてみるのがおすすめです。

    ルールが加わった鬼ごっこ【5~6歳】

    運動能力も向上してきた5~6歳には、基本的な動きに別の動きを組み合わせた運動をするのがおすすめです。例えば「色鬼」や「高鬼」といった視覚も駆使した鬼ごっこや「ボールを蹴りながら鬼ごっこをする」など別の動作をしながら鬼ごっこをするといったものです。

    このような少し複雑な動きが必要になる運動は、今までの経験や知識を生かして、自分なりに工夫するなど、非常に頭を使って運動することになります。

    一つのことをしつつも、同時に2個以上のことを頭で考えながら実行するのがポイントです。

    まとめ

    6歳までに80%の神経機能が発達するという事実を知ると、親としては「就学前にたくさん運動させなければ!」と焦ってしまう気持ちも出てくるかもしれませんね。実際に、幼児期から運動習慣をつけるのは非常におすすめです。
    年齢が上がるほど「習慣」というのはつけづらくなるものだからです。

    楽しく習慣化させるポイントは、年齢や段階に合わせて、運動や外遊びを選ぶこと。親が張り切りすぎてしまうケースもありますが、年齢だけでなく、子供それぞれのの動きや段階に合わせて適切な運動を取り入れることが大切なのです。

    対象年齢・適正年齢を無視した運動は、子供にとって心身の負担となり、運動嫌いの原因にもなりかねません。子供が好きな運動を見つけて、一緒に楽しみながら体づくりを進めていきましょう。


    【参考・引用・関連リンク】
    数字で見る!「6」歳までの幼児期における運動習慣が与える影響
    https://sports.go.jp/special/value-sports/importance-of-sport-habit-until-6-years-old.html

    スポーツ庁 平成28年度体力・運動能力調査
    http://www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2017/10/10/1396897-5.pdf

    文部科学省 幼児期運動指針ガイドブック
    http://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/05/11/1319748_5_1.pdf

    智原 江美 幼児期の発育発達からみた運動遊びの考え方
    https://koka.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=53&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

    金 美珍(2011)幼児期の運動や運動遊びの経験が学童期の子どもの生活・健康・体力に及ぼす影響、小児保健研究、No.658、p658一668
    https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2011/007005/012/0658-0668.pdf

    論文:運動有能感
    Harter, S. (1978). Effectance motivation reconsidered: Toward a developmental model. Human Development, 21, 34-64.
    https://www.karger.com/Article/Abstract/271574

    佐々木 玲子(2012) 子どものリズムと動きの発達、バイオメカニズム学会誌,Vol. 36, No. 2, p73-78
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/36/2/36_73/_pdf

    文部科学省 幼児期運動指針
    http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm

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