目次

母子手帳や育児書を読んでいると、「乳幼児には、テレビやDVD などを長時間観せるのはやめましょう」というような記述があります。こういった意見が気になって、テレビをあまり観せていないというご家庭もあるのではないでしょうか。

母子手帳

乳幼児にとって、テレビがどのような影響をもらたしてしまうのか気になるところです。
今回、乳幼児の発達とテレビの関連性について、様々なデータを用いながら分析をしてみたいと思います。

テレビは子供が黙ってくれる魔法のツール

「なるべくであれば、乳幼児にテレビを見せるべきではない」と頭では理解していても、テレビは子育てをする上でとても便利なツールです。なかなか手放す事が難しいという現状があります。
筆者は、長男が1 歳の頃までテレビをよく見せていました。特に、洗濯物を干しにベランダに出る間や料理中など自分の具合が悪い時には、テレビは大活躍してくれます。長男は、テレビを見ていると静かにしてくれていたので、テレビはワンオペ育児で疲れ気味の私にとって魔法のツール。ついついテレビに子守りを頼む事がありました。
テレビの影響を考えるよりも、テレビの便利さが勝ってしまっていたのです。

乳幼児の発達にテレビは悪影響を与えるのか?

テレビが乳幼児の発達にあまり好ましくない影響があるのではないかと、心配になるパパやママもいるでしょう。どうしても赤ちゃんや幼児にテレビを見せている時間は、テレビに任せっきりで、親子の会話やふれあいがなくなってしまうものです。
では、実際に乳幼児の発達とテレビには相関関係があるのかという点について、研究データを見てみましょう。

発語が遅れる

2005 年、日本小児科学会「こどもの生活改善委員会」で、1 歳半の子ども1900 人を対象に行った調査データによると、子どもや親が長時間(子ども4 時間以上、親8 時間以上)テレビを見ている家庭は、テレビを見ていない家庭(子ども、親共に4 時間以内)に比べて、発語(「パパ」「ママ」など)が遅れている子どもが2倍いるという結果が出ています。
テレビの画面は目まぐるしく移り変わっていきますので、小さな子どもにとって「テレビの画面を見る事」だけで精いっぱい。とても「テレビを見ながら会話をする」余裕はありません。テレビを見る事によって「話す」機会が奪われてしまうと考えると、発語が遅れても不思議はありません。

長時間テレビ視聴が習慣化すると、全体的な発達が遅れる可能性がある

「発語が遅れるだけであれば、言葉を発するようになってからのテレビ視聴は問題ないのではないか?」という疑問も出てきます。しかし、長時間テレビを視聴している状況が習慣化してしまうと、言葉や友達などとの関わり合いを中心とした発達が遅れてしまう可能性があるという研究データがあります。

愛知県立大学「乳幼児期のテレビ接触時間と子どもの発達・育児状況に関する研究」が、1 歳の時点で長時間テレビ視聴をしていて、なおかつ4 歳の時点でも長時間テレビ視聴をしている場合、短時間テレビ視聴をしている4歳の子どもとどのような発達の違いが出てくるのか調べています。研究データによると、1歳の頃から長時間テレビ視聴をしていて、4歳の時点でも長時間テレビ視聴をしている子ども(59 人)のうち、15.9%が「専門機関などから発達の遅れの指摘あり」とのデータが出ています。それに対し、短時間テレビ視聴の子どもの該当者は6.7%ですので、誤差の範囲とは言えない結果となっています。

ただし、テレビの影響で発達が遅れているというわけではなく、長時間テレビ視聴をしている子ども達の1 日は、「テレビ視聴」が大半を占めており、本来経験すべき「友達との関わり合い」「外遊び」などの経験に乏しく、その結果として「発達が遅れている」と診断が下っている可能性があります。
いずれにしても、テレビを視聴する行為は受動的です。幼い頃から受動的な生活を送っていると、自主的な行動を「難しい」と感じ、本来持っている子どもの自主性を潰してしまう可能性があるのです。

乳幼児とテレビを観るときのポイント

前述の通り、乳幼児期のテレビ視聴は子どもの発達に悪影響が出る可能性があります。テレビを避けて育児をするのが理想ですが、現実的には、そうもいっていられない家庭も多いものです。テレビによる悪影響を最低限にとどめるためにも、乳幼児とテレビを観る際には、以下の点に気を付けてテレビを見せる様に工夫しましょう。

子どもに話しかけながら見よう

テレビは一方的に情報が流れてきますので、どうしても受動的になります。幼い子どもにとっては、テレビで流れてくる情報や画面を追うだけで精一杯になってしまいますので、言葉を発するまでの余裕がありません。
そこで、子どもと一緒にテレビを観て「これはネコだね」「〇〇ちゃんは、(テレビに映っている)りんご好き?」など、なんでもいいので話しかけてみましょう。あなたの話しかけに子どもも反応して会話を楽しんでくれるかもしれません。
また、子どもが少し話せる年齢であれば、テレビ番組を1 つ見終わった後に「さっきの番組どうだった?〇〇が出てきて楽しかった?」等のフィードバックを求めて、親子でコミュニケーションを取ってみるといいですね。

寝る前のテレビは控える

テレビの画面は、音や光の移り変わりが激しく、脳に刺激が強すぎるため、入眠がスムーズに出来ない可能性も出てきます。その結果、睡眠不足にもなりかねません。睡眠不足によって、日中でも眠くなり効率的に動くことが出来ず、結果として学力低下につながる原因にもなったりしてしまいますので注意が必要です。

ダラダラ見させない、時間を区切ってテレビを観る

育児をしていると、どうしてもテレビに頼りたい時間もあります。ちょっと家事を済ませたい間だけに限定して、その他の時間はテレビを消す習慣をつけましょう。
また、パパにも協力してもらい、子どもの前ではテレビを見ないというルールを作り、子どもが寝た後に、テレビ・オン・デマンド(=見たいときに様々な映像コンテンツを視聴できるサービス)を利用してもらいましょう。パパの協力は必須です。

【体験談】テレビなし育児は辛い?

筆者は、3 歳と1 歳の子どもを育てています。上の子が1 歳の時にテレビを撤去して以来、テレビなし育児を行っています。四六時中、子どもが自分の周りにまとわりついてくるため、何をするにも時間がかかって大変です。
特に、子どもが自分の周りをウロウロすることで困ると感じているのが、洗濯物をベランダに干す時と調理をする時。タイミングよくどちらかが寝ていれば、1 人を見ているだけで良いですが、1人で同時に2 人を見るのは大変です。では、2 人を同時に見なくてはいけない状況ではどのように対処しているのか紹介します。

【洗濯物をベランダに干している時】

  • 3 歳の子に「〇〇とって」「〇〇とって」とお手伝いさせながら干す
  • 3 歳がお手伝いを拒否した場合は、絵本を読むなどして私が見えるところで待っててもらう
  • 1 歳の子は、抱っこひもでおんぶするか3 歳の子と一緒にお手伝いさせながら干す
  • 【調理をする時】

  • 1 歳は私の近くにいるので、なるべくガスコンロを使わず「電気圧力鍋」を使用して調理する
  • ガスコンロを使うのは、夫がいる時や1 歳が昼寝している時だけ
  • 普段ガスコンロは、チャイルドロックをかける
  • 包丁などは子どもたちの手の届かない場所に収納する
  • 家の中で長時間やり過ごすのが辛い時は、ショッピングモールや大きめの公園に行って時間を潰しています。また、2 人とも絵本や雑誌を読むのが大好きですので、家にいる時は読み聞かせしている事がほとんどです。

    テレビなし育児をしていると、必然的に子どもと向き合って付き合わなければいけませんので、疲れることもあります。ですが、こんなに疲弊するのも日中の幼稚園(又は保育園)に通うまでの数年間だけの事。むしろ、この貴重な乳幼児期のふれあいの時間を大切にしています。
    また、夫には子どもの発達とテレビの関連性について説明したところ、納得してくれました。どうしても見たい番組がある場合、子どもが寝た後に見てもらっています。テレビを観る時間が、夫婦や子どもとの、会話やふれあいの時間になったので、コミュニケーション不足による夫婦喧嘩もかなり減りました。

    コミュニケーションを大切に

    乳幼児の発達とテレビには、多少なりとも悪い方向での相関関係があると様々な研究データでわかっています。だからといって、テレビを完全に撤去することも難しいと思います。少しテレビを見る時間が長いなぁと感じていたら、パパとも協力して、テレビを付けている時間を減らしてみましょう。最初は少し物足りない感じがするかもしれませんが、自然と会話も増え、家族の時間が充実したものになるはずです。

    子どもは、人と人とのふれあいから様々な事を学んでいきます。テレビを見せるにしても、長時間付けたままにするようなことは控え、ほどほどにする事が大切です。

    今回はテレビについて考えましたが、タブレットやスマートフォンといったデジタル機器が当たり前の世の中では、意識して子どもとふれあう時間を作ることが、ますます重要になってくるように思います。

    【参考・引用・関連リンク】
    白十字小児科医院「日本小児科学会 こどもの生活環境改善委員」
    http://www.hakujyuji.com/media-syounikagakkai.htm
    愛知県立大学「乳幼児期のテレビ接触時間と子どもの発達・育児状況に関する研究」
    https://ci.nii.ac.jp/els/contents110006200175.pdf?id=ART0008218216

    LINEで送る