昨今、核家族化が進んだことにより親族からの十分なサポートが期待できず、夫婦だけで子育ての様々な状況を解決しなければならない環境下にいるという家庭も珍しくはありません。その結果、母親の家事や育児、仕事の負担が増え、肉体的・精神的にもプレッシャーが重くのしかかっている現状があります。そして、このような状況下を表す「ワンオペ育児」という言葉までも派生し、使われるようになりました。

育児は女性がするものという概念が母親を追い詰めている

内閣府男女共同参画白書の「仕事と家庭のあり方|男性にとっての男女共同参画」によると、1980年頃は男性のみが働いている世帯が、共働き世帯よりも2倍程の差をつけて多かったのが、1997年頃に逆転します。2000年代に入ると共働き世帯が上回る様になり、その後年々増加傾向にあります。近年、待機児童問題が注目されるようになったのも、共働き世帯が増えてきたことによる結果の1つでしょう。

しかしながら、生活形態が変わり、男女ともに働く時代に突入しているのにも関わらず、日本では「男性は外で働き、女性は家事をする」という固定概念は根強く残っています。内閣府男女共同参画白書のデータでは「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に賛成である男女は、全体の4~5割ほどであり、2002年頃からこの割合に変化はありません。

つまり、現代の母親は「家事」「育児」と「仕事」の両立を迫られている事になります。その結果、「少しでも安らげる時間が欲しいのに、自分の時間が全然ない」と潜在的に感じる母親も多いのではないでしょうか。

赤ちゃんの就寝中も母親は気を抜けない

現在、育児書やテレビ、ネットなどの様々な媒体で育児についての情報を得る事ができます。親族に頼る事のできない母親は、必然的にこのような媒体を駆使して育児に対する不安の解決策を探しています。

例えば、育児に関する情報収集の過程で、初めて「乳幼児突然死症候群(SIDS)」という言葉を知った母親もいるでしょう。

SIDSは、何の前触れもなく乳幼児が突然死に至る原因不明の病気です。厚生労働省のデータによると、平成29年には77名の赤ちゃんがSIDSで尊い命を失っています。厚生労働省は、SIDS の発症リスクを低くするための3つのポイントとして、「うつぶせ寝をさせない」「出来る限り母乳育児をする」「タバコはやめる」と提唱していますが、例えそれらを守っていてもSIDSを完全に防げる保障はありません。

赤ちゃんが睡眠中であっても気を抜けないワンオペ育児は、母親の精神面に大きな負担がかかってしまいます。

辛いワンオペ育児の手助けとなるベビーテック

近年、欧米で注目を浴びているベビーテック(Baby Tech)。アメリカでは、家電見本市の「CES」でBabyTech Awardが開催されるほど、成長著しいマーケットになっています。
IT(情報技術)とIoT(モノのインターネット)の技術を活用し、出産や子育てを助ける製品やサービスを指します。これは、一時も心が休まる事のないワンオペ育児の母親にとって、育児を強力にサポートしてくれる製品になるかもしれません。例えば、下記のようなベビーテック製品があります。

  • おしゃぶり型のセンサーで赤ちゃんの水分量を測定して、脱水症状がみられるとスマホに知らせてくれる「ユア パシファイア(your pacifier)」
  • ミルクの温度管理はもちろん、哺乳瓶立ての中の重量センサーで、赤ちゃんがどのくらいのミルクを飲んだのかスマホに記録できる「ベイビー・グルグル(Baby Glgl)」や「BlueSmart mia」
  • 睡眠時の赤ちゃんの呼吸を測定し、異常があった場合にアラーム音で知らせてくれる「Baby Ai」
  • ベビーテックを上手に利用すれば、育児の負担軽減と共に、母親の辛いワンオペ育児のサポートとして期待できるでしょう。

    赤ちゃんの睡眠時見守りに注目されつつある「ベビーセンサー」

    日本では、文化的背景の違いなのか、育児にIT機器を使用するのに抵抗感を持つ人が少なからずいるという新聞記事などもあり、現状あまりベビーテック製品の普及は進んでいません。
    しかし、昨今の保育施設での事故等の対策として、「平成30年度保育対策関係予算概算要求の概要」によると、保育施設に対し、赤ちゃんの睡眠時を見守る事ができるベビーセンサーは、一部補助の対象となりました。その結果、ベビーセンサーを採用する保育施設が日本国内でも増えてきており、ベビーテック製品が徐々に注目されるようになってきているのです。

    日本製ベビーセンサー開発に尽力している開発者様にインタビュー

    赤ちゃんの睡眠時の安全を見守るベビーセンサー。国内初となる一般家庭向け日本製ベビーセンサーの開発者である 遠山直也様 にインタビューしました。

    インタビュアー:ライター 相場一花

    相場:日本製ベビーセンサー開発のきっかけをお聞かせ下さい。

    遠山:当社はバイタルセンサーを利用した呼吸センサーの開発をしていました。元々、介護や睡眠時無呼吸症候群を防止するために呼吸リズムを計測する技術を磨いていましたが、SIDS(乳幼児突然死症候群)を特集しているニュースを見た時、自社の技術で睡眠中の赤ちゃんを守れるかもしれないと思ったのがきっかけです。

    相場:それは素晴らしいですね。睡眠時の赤ちゃんの体動や呼吸が確認できれば、私も安心して赤ちゃんと一緒に寝られます。赤ちゃんの世話をしていると、睡眠時間の確保が難しいのでベビーセンサーがあると便利ですよね。
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    相場:ベビーセンサーを使うメリットは何でしょうか?

    遠山:赤ちゃんの安全とご両親の不安解消できることが一番のメリットです。SIDSや窒息が発生した際、いち早く気づくことができます。また、SIDSを心配して一晩中安眠できないご両親がベビーセンサーを使用することによって、気持ちにゆとりが出ます。

    相場:まったくその通りだと思います。私は心配性なので、いくつものベビーセンサーを我が子に使っていました。ベビーセンサーが無かったら、夫と交代しながら寝ずの番で赤ちゃんを見守っていたかもしれません。
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    相場:ところで、ベビーセンサーには誤作動もありますよね?私自身、複数のベビーセンサーを利用してきましたが、赤ちゃんに異常がないのに警告音が鳴る事がありました。

    遠山:はい。赤ちゃんの呼吸は非常に弱いものであり、呼吸が浅く不安定なケースもあります。その場合、センサーの感度が足りずに、警告音が鳴ってしまうという事が起きる事もあります。

    相場:では、センサー感度を高くすればいいのでは?

    遠山:センサー感度を高くしてしまうと、今度は「風」「音」「振動」などリズムによっては、赤ちゃんの動きや呼吸に近いため、今度は警告音が鳴らないという問題が出てしまいます。そのため、当社の日本製ベビーセンサー「Baby Ai」は、専用のアプリを使って感度調整できるようになりました。
    baby-ai


    相場:それはいいですね。私が使用していた海外製のベビーセンサーには、感度調整機能はありませんでしたので、あったらとても嬉しいです。
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    相場:ベビーセンサー導入によって育児はどう変わると思いますか?

    遠山:繰り返しにはなりますが、ベビーセンサーがあれば夜間におけるご両親の負担が大きく減ります。特に赤ちゃんが心配で安眠できない方にとっては、心強い味方です。産後うつによって精神状態が安定していないお母さんの心を支えることができるでしょう。

    相場:個人的には、赤ちゃん育児の一番辛いと感じるところは「睡眠不足」であると思っています。確かにベビーセンサーがあると、「自分だけではなくベビーセンサーも見守っていてくれる」という安心感があるので、心に余裕が持てますね。

    遠山:そうですか。それは喜ばしい事です。ですが、ベビーセンサーはあくまでも補助的な機械という事は忘れないようにして下さい。

    相場:はい。あくまでもメインは自分で、サブがベビーセンサーという認識ではいます。1人でも多くの赤ちゃんと両親に安心を与えるため、日本でもベビーセンサーが普及する事を願います。今回はお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

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    インタビュイー Interviewee
    遠山社長
    株式会社リキッド・デザイン・システムズ
    社長 遠山 直也 様
    https://liquiddesign.co.jp/

    ◇Top image source
    https://awards.babytechsummit.com/

    【参考・引用・関連リンク】
    内閣府男女共同参画白書 「仕事と家庭のあり方|男性にとっての男女共同参画」
    http://www.gender.go.jp/policy/men_danjo/pdf/basic/kiso_chishiki1.pdf

    厚生労働省 11月は「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の対策強化月間です
    https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000181942_00001.html

    平成30年度保育対策関係予算概算要求の概要
    http://www.zseisaku.net/data/H30yosangaisanyoukyu06_sanko.pdf

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