人間の基礎がつくられる大切な時期「幼児期」。このころの子供は自我がぐんぐん成長してくるため、わがままを通そうとしたり、癇癪(かんしゃく)を起こしたりすることもしばしばです。
いまは、叩かないで叱る・褒めて育てろ、叱らない教育…などいろいろな意見があることから、必要以上に叱ってしまったり、極端にべた褒めしてしまう状況に陥る方もいます。

そこでこの記事では、子供の心にきちんと届く「褒め方」や「叱り方」について解説します。無駄に子供の感情をかき乱したり、ときに子供が矛盾を感じて混乱することを避けるための、効果的な褒め方・叱り方の参考にしてみてください。

実に9割のお母さんが「叱り方」に悩んでいる

小さな悩みから大きな悩みまで、子育てに関する悩みはどの親も持っています。そのなかでも世代に共通している悩みが「叱り方」です。

保健センターなどでおこなわれている乳幼児健診では、職員への「子育てに関する相談」の時間が設けられています。植松紀子 著「6歳までの子供のほめ方叱り方(すばる舎)」によれば、およそ9割のお母さんが「叱り方」に関することで悩んでいるのを実感しているとされています。

たとえば、「どんなに叱ってもやめない」「叱るときの声のかけ方」という具体的な叱り方についての悩みから、「毎日叱ってばかり」「叱るより褒めたほうがよいのか」という、母親の葛藤ともいえる悩みまでさまざまです。

子供のことを思うがゆえ甘やかしたりせず、いけないことをしたら正す。親としての愛情や責任感、そして子供を導くためにも「叱ること」は必要なことです。
「ここまで強く叱らないほうがよかったのか」と思いつつも、「強く叱らないと言うことを聞いてくれない」というジレンマもあるでしょう。さらに、子育てにはさまざまな意見があるため、周りの経験や助言を聞けば聞くほど、余計に混乱してしまうこともあります。
イメージ-落書き

「年齢」に適した接し方を。乳児〜幼児までの発達段階に基づいた情緒推移

子供の年齢における特徴的な行動や、物事の感じ方について理解しておくなら、悩んだり苛立ったりすることが少なくなります。子供の成長は著しいものです。1歳の差であっても、とる行動や物事の理解は異なります。

ここでは、子供の発達に合った「親の接し方」についてご紹介します。

「1歳」自我が芽生える”自立期”

この時期は、親の真似をして日常生活について覚えていったり、自分で歩く・自分で食べる…といった「意思」が成長していくときです。

心理学では「第一自立期(第一反抗期)」ともいわれており、1歳半〜3歳ぐらいまでを指します。自己中心的な思考であるため、嫌いな食べ物は床に落としたり、お皿をなげたりします。反対に、やりたいことは思うがままやってしまうため、壁にクレヨンで落書きしたり、タンスのなかの服を全部出したりすることも。
そんなとき親は「危ない」「ダメだよ」と叱るものですが、子供は力いっぱい抵抗します。「反抗」しているように見えますが、子供は「自分でやりたい」という自立心を単純に行動に表しているだけなのです。

この時期は「してはいけないこと」について理解することができません。そのため、短い言葉で繰り返し注意し、身体全体を抱きとめて制止するに留めるのがポイントです。そのあとに「ご飯を投げてはいけないよ」「クレヨンは壁に使わないでね」といった「理由」を、《しっかりと短く》伝えるようにします。

「2歳」”自分で”やりたい時期

家の外でも、自己中心的な行動をとる機会が増えてきます。
公園や児童館などでほかの子供が遊んでいると近寄っていったりしますが、まだ交流して遊ぶことができず、よく見ると一緒に遊んではいません。そのため、ほかの子のおもちゃを奪ったり、積み木などを自分の欲求のままに壊したりします。そのたびに叱ったり、周りにも気を使うため目が離せなくなるでしょう。

また2歳の後半になると、自我が発達し自分でやりたい意欲がより強くなるため、「イヤ」と主張することも増えてきます。これは今まで依存してきたお母さん(お父さん)から自立したいという欲求が強くなるためなので、「母子分離」と呼ばれています。

「3歳」”感情”がでてくる時期

3歳になると第一自立期が終わり情緒が安定してくるため、注意をすると理解し、やらなくなります。おもちゃを貸したり、子供同士で遊べる場面が増えてくるでしょう。幼稚園など集団生活が始まることで、友達を真似したり、話しかけて一緒に笑ったりなどするようになるのです。

その半面、お友達を叩いたり、突き飛ばすなど攻撃的な感情や、「怖い」や「暗い」など恐怖の気持ちも芽生え始めるころ。また、区別して物事を考えられるようになるため、「昨日~した」「今日は~だよ」という時間軸や、物の大きさなどの違いを理解しはじめます。さらに性別があることもわかり始め、自分の性別についても意識をし始めるでしょう。

しかし「男の子らしくない」「もっと女の子らしく」といった「らしさ」を押し付けてしまうと、自分の行動や気持ちに対して迷いが出てしまうので、個性として受け入れてあげることは重要です。

「4歳」”ルール”がわかる時期

「ごっこが遊び」ができるようになる4歳は、簡単な役割を演じることができるようになります。こうした遊びを通じて、順番やルールをしっかりと守れる子・守れない子など、本人たちの間でも差を感じ始めるように。そして「ルールを守れるえらい子」「いつも自分勝手な悪い子になりたくない」と、自分に投影するようかたちで成長していくのです。

ルールを守れず親に叱られると、癇癪を起こしてムスっとすることがあります。これは、ルールを守ろうと意識しているのに、それを守れなかったことを指摘されて恥ずかしくなってしまうからなのです。

このようにルールが分かり、それを守ろうとする気持ちが湧いてくる4歳代は、「しつけ」をするのに最も適した時期ともいわれています。毎日守ることができるルールや目標を、無理のない範囲でたてるなら、子供の社会性を伸ばすことにもつながるでしょう。

「5~6歳」児童期への大切な”過渡期”

ごっこ遊びから、より複雑な「おままごと」などへ、遊びもシフトしていきます。空想のテーマを決めて、ほかのお友達と一緒に共有することができるようになるでしょう。これは、役割や思いついたイメージを「言葉で伝える」ことができるようになった証でもあるのです。

そのため、日常会話も大人のように複雑に変わっていきます。「お母さんにいうよ!」と警告して告げ口をしたり、言葉を紡いで思い出をたどる、といったことができるようになります。事実関係を客観的に捉え、何をすべきか考える力もついてきますので、自分たちで解決策をだすことができるよう、親がサポートするのがポイントです。

また、家庭や幼稚園・保育園での集団生活において「物事の概念」をどんどん理解するように。自分自身で状況を認知し、やるべきことを判断して行動に移すことも可能になってきます。
怒られる男の子と女の子

性別による接し方の違いー男の子は「根拠」女の子は「情緒」

男女では「脳の反応の仕方」が微妙に異なることから、物事への感じ方や行動に違いがあります。

男の子に指示を出す場合には「なぜ必要なのか」「こういうルールがあるからやらないといけない」といった「根拠」を具体的に話さないと、なかなか納得しません。根拠をしっかりと伝えることができれば、納得して行動することができます。

女の子にも根拠を説明することは大切ではありますが、それだけでは心になかなか響かないことがあります。そんなとき、女の子には「情緒」の言葉を追加してあげると納得しやすくなるでしょう。

女の子は他人の感情を察知し、叱られる前に先回りして行動することを得意としますが、男の子は他人の感情への関心が低いため、他人の気持ちを察して行動することがなかなか難しいものです。
このように、行動や心にも差がある男の子と女の子の性質を理解してあげることが重要です。

「叱る回数を減らしたい…」冷静な状況判断と原因の追究、年齢と個性に適した”ルール決め”

子供の行動に対する見方を少し変えたり、子供への声かけを少し工夫するだけで、叱る回数を減らすことは可能です。むしろ、無意識のうちに、自然と叱る回数が減るでしょう。

実は、本当に子供を叱る必要があるシーンは、とても少ないものなのです。厳しく言い聞かせる必要のある場面とは、

  • 生命に関わるような危ないことをしたとき
  • 大事なことに関するルールを破ったとき
  • 人に迷惑をかけるようなことをしたとき
  • です。

    これらのポイントと、これら以外のシーンで、必要以上に叱ることを避ける方法についてご紹介します。

    「危ないことをする」

    包丁を触ろうとしたり、コンロに手を出すなど、2歳くらいまでは何が危ないのか理解できないものです。危ないことをするたびに注意して、止めなければなりません。

    しかし、実際は心配するほどではないことでも叱られているケースがあります。たとえば、少し高いところに登って飛び降りる行動。「危ないよ!」「やめなさい」と叱りがちです。このような場面では、子供自身が「怖い」と思ったら、泣いて知らせたり助けを求めてくるので、すぐに手助けができる場所で見守っていれば大丈夫です。「危ない!」と声を掛けられるとびっくりして不安になり、逆に落ちてしまうことがあります。

    「ルールを破る」

    3歳ぐらいからは社会性が育っていき、保育園や幼稚園などで守らないといけないルールがあることを理解しはじめます。そのため、大切なものを投げたり、食べ物で遊んだりと、ルールを破ったときにはしっかりと叱ってわからせることが大切です。

    しかし、子供はおもしろそうなものが目の前にあれば必ず手を出してしまいます。そんなときは、近くに居て監督しながら、対象のモノを少し触らせてあげるようにしてみましょう。欲求が満たされ、嬉しくなり、落ち着いてきます。
    「触ってはダメ!」と言われることで、余計にそのモノに執着することを防げるため、結果的に叱ることを回避できるでしょう。

    迷惑をかける

    子供は、友達のおもちゃを奪ったり、スーパーの店内を走り回る、レストランで騒ぐなどといった行動を起こすことがあり、こうした行為は周りの人に迷惑がかかってしまいます。
    他人との関わりをしっかりと学んでいく必要があるので、迷惑をかけるような行動をしたときはきちんと叱り、幼いうちから「人に迷惑をかけることをしない」という意識をもたせてあげることが大切です。

    しかし、大人にとっては「買い物をする場所」であるスーパーも、子供にとっては「興奮する場所」。そのため、「叱るハメ」になる状況をあらかじめ避けてあげるのも重要です。週末にまとめ買いをし、日頃は補充程度の短時間の買い物で済ませば、飽きて騒ぎ出すことも少なくなるでしょう。
    娘を慰める母親

    子供の成長に繋がる、有効な「叱り方」とは?

    「叱る」とは冷静に言い聞かせることであり、人としてのお手本をみせることが大切です。

    感情的に物事を言うのは、「怒っているだけ」。感情に任せた言葉は、子供はおろか、どんな人の心にも響かないものです。あなたが「怒っている」という事実だけが心に残り、肝心の「怒っている内容」については、頭に入らなくなってしまいます。
    その結果、子供は、怒らせないように行動することだけを考えて過ごすようになります。「怒られた理由」が残っていないため、同じ間違いを犯すことにもつながり、また同じことで怒られてしまうのです。

    また、感情的に怒られた際には「同じ間違いを犯さないようにしなければ」という気持ちではなく「とにかく親の怒りをしずめたい」という気持ちから謝るようになってしまいます。

    「叱る」のは、いけないことをしたら注意するという「生活の知恵」を与えていることであり、その子のためになる行為です。ここらは、心に響く「叱り方」についてご紹介します。

    やる気のある子・1人でできる子にするため「いたずら」をさせる!?

    児童心理学では「いたずら」のことを「探索欲求に基づく行動」と名付けており、いたずらをする意味について認めています。

    著書「新装版 子どもを叱る前に読む本:「やる気のある子」「ひとりでできる子」の育て方」では、「研究心の盛んな青年にしたい場合には「いたずら」をじゅうぶんに体験できるようにすることが大切」とされています。
    しかし、どうしても困ってしまういたずらの場合には、困っていることをはっきりと表明するのがポイントです。赤ちゃんの頃と比べて言葉がわかってくると、表情や言葉の調子から気持ちを汲みとるようになります。「それお母さんの大事なものよ」「お母さん、困っているんだよ」と情を通じて訴えることが大切です。

    年齢がたかくなるにつれ、「いたずら」で相手が困ると判断したときは、それを我慢するようになります。これは「自己統制の能力」と呼ばれています。「怒られるから我慢する」という、他人からの統制とは異なるため、子供の自発性ややる気を阻害しません。

    自己肯定感が育つ叱り方

    著書「叱るより聞くでうまくいく 子どもの心のコーチング」では、「子育ては”聞く”が9割でうまくいくと感じている」と述べています。

    まず、叱る前に子供の「思い」を聞いてあげるのがポイントです。子供は自分自身で問題を解決する能力をもっているため、それを引き出すためにも「聞く」ことが大切になります。
    また、子供の「だって」に続く言葉にも耳を傾けることが重要です。子供を親の思い通りに動かすのではなく、子供を認め・教え・伝え・考えさせ・話し合うことで、自己肯定感が高い「自ら考え行動できる子」を育てていくのです。

    子供の心に矛盾を生まない

    著書「子どもの心のコーチング【しつけ編】:「ほめる」「叱る」よりうまくいく子育ての極意」には、「親の言うことに一貫性が無いと、子どもは混乱してしまう」と記されています。
    たとえば「叩かないの!」と子供を叩きながら叱る、「優しくしなさい!」と怒鳴る、などといったことです。または、昨日は大丈夫だったのに今日はダメだと言われる。そうすると明日はなんて言われるかわからないため、何を信頼したらいいのかわからなくなってしまう…といったケースもよくあることです。

    そのため、感情に振り回されることなく、一定の考えに沿って叱ることがポイントとなります。しかし、親も完璧ではないため、感情的に叱ってしまうこともあるでしょう。そんなときは「怒鳴ってごめんね」「お母さんが間違えていたよ、ごめんね」と、子供にしっかりと謝ることが大切です。
    それにより、子供は親を信頼し、許してくれるでしょう。間違った場合には謝るというのも、しつけの一貫性です。
    タッチする親子

    個人としてを認め、本当に必要な言葉を与えましょう

    年齢や性別での感じ方・行動に違いはあるものの、全ての子供にとって大切なのは、一所懸命な努力や姿勢について、1人の個人として人格を認めてあげることです。
    「男らしく、女らしく」「お兄ちゃんなんだから、お姉ちゃんなんだから」という要求や言葉はよく耳にするものですが、これらの言葉は個性を奪い、本来持っている能力を発揮する勇気・チャンスを奪ってしまうでしょう。

    また、明らかに助言が必要な場面では「○○しましょうね」という問いかけではなく、「○○してはダメ」とシンプルに叱ることが重要です。それにより子供は「いけないこと」という意識を捉えることができるようになります。

    叱る回数を減らす工夫、また必要なときにだけ適切な態度で叱るよう務めるなら、親の心もいつしか穏やかになっていきます。子供はその心情を敏感に感じ取って、どんどん成長していきます。お互いに、気持ちよく成長していけると良いですね。

    【参考・引用・関連リンク】
    ■「6歳までの子供のほめ方叱り方」植松紀子 すばる舎

    ■「新装版 子どもを叱る前に読む本「やる気のある子」「ひとりでできる子」の育て方」平井信義 PHP研究所

    ■「叱るより聞くでうまくいく 子どもの心のコーチング」和久田ミカ KADOKAWA

    ■「子どもの心のコーチング【しつけ編】「ほめる」「叱る」よりうまくいく子育ての極意」菅原裕子 PHP研究所

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