日本の子どもたちの「自己肯定感(自分に対する肯定的な意識)」は、諸外国に比べて低い状況であることが文部科学省などから報告されており、最近とくに注目を集めています。

この「自己肯定感」とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。また、この感情が低いことによって、子どもにどんな影響があるのでしょうか。それは、子どもの成長にとってどれほど重要なことなのでしょうか。

この記事では、自己肯定感を育てていく方法についても合わせてご紹介します。

「自己肯定」が低い日本の子どもたちーそもそも”自己肯定”とは?

自己肯定感とは、1994年、高垣忠一郎氏によって提唱された言葉です。「没個人化」が生じている子どもの状態像を説明する言葉として「自己肯定感」が用いられています。「自尊感情」との関連性が指摘されており、明確な弁別化はなされていません。そのため、各研究者による「自己肯定感」の定義は数多くあります。

たとえば、

  • 現在の自分を「自分である」と認める感覚
  • 自分自身のあり方を肯定する気持ちであり、自分のことを好きである気持ち
  • 自分自身のことが好き(自己受容)・自分自身を大切にしている(自己尊重)・生まれてきてよかった(自分の命にたいする受容)といった感情を合わせたもの
  • 「自分自身のあり方」を概して、肯定する気持ち
  • 自分に対する評価を行なう際に、自分のよさを肯定的に認める感情
  • 自分は大切な人間だ、自分は生きている価値がある、自分は必要な人間だ、という気持ち
  • と、さまざまです。

    公の機関での定義として、東京都教職員研修センターが行った研究「東京都教職員研修センター紀要 第12号(平成25.3)8頁」では、

  • 1.【自己評価・自己受容】自分のよさを実感し、自分を肯定的に認めることができる
  • 2.【関係の中での自己】多様な人との関わりを通じて、自分が周りの人に役立っていることや、周りの人の存在の大きさに気付く
  • 3.【自己主張・自己決定】今の自分を受け止め、自分の可能性に気付く
  • という3つの観点から自己肯定感は捉えられています。
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    また、内閣官房教育再生実行会議における、教育再生実行会議「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り開く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上(第十次提言)(平成29年6月1日)」の15頁では、

  • 1.勉強やスポーツ等を通じて他社と競い合うなど、自らの力の向上に向けて努力することで得られる達成感や、他者からの評価等を通じて育まれる自己肯定感
  • 2.自らのアイデンティティに目を向け、自分の長所のみならず短所を含めた自分らしさや個性を冷静に受け止めることで身につけられる自己肯定感
  • の、2つの側面から捉えられてもいます。

    上記のことをまとめると、

  • 1.他者評価等に基づく自己肯定感
  • 2.自己受容に基づく自己肯定感
  • 3.絶対的な自己肯定感
  • という3つの概念にまとめることができます。

    (1)は自らの努力や能力・成果の「他者からの公的的な評価」や「他者との比較」によるもの、(2)は自分らしさや個性(短所長所問わず)を自分自身によって受け止めること、(3)は自身の全存在に対する、身近な人(保護者など)からの愛情によるもの、とされているのがポイントです。

    なぜ日本の子どもは「自己肯定感」が低いのか?

    文部科学省が2002年におこなった調査や、2002年・2009年の日本青少年研究所による調査によって、「日本の子どもの自己評価が諸外国と比べて低い」ことが指摘されました。このころから「自己肯定感」というワードが注目されはじめます。

    日本青少年研究所(2014)での調査にて、「私はほかの人々に劣らず、価値のある人間である」「全体としてみれば、私は自分に満足している」という質問項目があります。

    これらの質問に対して「とても満足」、「まあ満足」と回答する割合が、日本は明らかに低い結果でした。
    反対に「自分はダメな人間だと思うことがある」という質問に対しては「よくあてはまる」、「あてはまる」と回答した人数の割合が、諸外国に比べて高い傾向になったのです。

    とくに日本人は、波風を立てないよう他人との共存を望み、自分中心的な行動は避ける傾向があります。そんな「謙遜」ともいわれている行動により、

  • 自分の考えや意見がいえない
  • 人からの評価に振り回される、不安になる
  • 他人と自分を比べる
  • 罪悪感を持ちやすい
  • 主体性が低く、他人軸
  • などといった傾向に陥りがちです。

    「自己肯定感が高い人」とは、自分も他人も同じように尊重し、自分の価値を見出すことができる人を指します。しかし、日本人特有の気質によるものなのか、そのような考えに至らない人が多いのが現状なのです。

    実は、親の「強い不安感」によって、子どもの自尊感情の育成を妨げてしまうことも大いに考えられます。それには、親自身が適度な自尊感情を身に着けていない場合が多くあるのです。

    こうしたケースの場合、弱い立場である子どもを、あの手この手でコントロールする「過干渉」により、親自身の不安を無意識に解消しようとする傾向が見られます。子どもは管理された生活に慣れてしまい、自己決定や自己選択の意識を持ちにくく、自己の主体性というものが乏しくなってしまうのです。

    また、家庭・および学校では、つねに他人と比べた評価を受け続けるのが日本の教育でした。自己肯定感を高めるには、「今の自分」を素直に受け入れることが必要です。これから自己肯定感を高めるような環境作りへの転換期として、さまざまな改革がされつつあります。

    自己肯定感を高めることによる、大きな3つのメリット

    「自己肯定感」は人生の質を左右するほど、個人の土台となる大切なものの1つです。自己肯定感を高めることで、対人関係を筆頭に、学力への影響なども報告されています。ここからは、自己肯定感を高めることによる大きな3つのメリットをご紹介します。

    対人関係がスムーズに!

    自己肯定感が低い場合、自分に自信が持ちづらくなります。「自分自身を信頼できないから他人も信頼できない、そして他人からも信用されない」という悪循環に陥ってしまうのです。

    自己肯定力が高いと、自分を尊重するように他者をも尊重し、人との違いを受け入れ、他者の意見を素直に聞くことができます。そうすると、物事を自然と肯定的に受け止められるようになるので、他人をジャッジするようなこともせず、感情が安定します。新しいことを吸収するチャンスも広がるでしょう。

    そして、「自信」によって自分自身を信頼することができるため、他者も同様に信用し、やがて周りからも信頼される…といった循環をうまく築いていていくことができるのです。これは家庭だけではなく、学校や職場などでも良い影響を及ぼします。

    自己肯定感が高い子どものほうが、学力向上が見込める

    東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 共同研究プロジェクトにて「子どもの生活と学びに関する親子調査2017」では、勉強や目標が「自己肯定感」に影響があると報告されています。

    成績が上昇した子どもは、成績がずっと下位の子どもに比べて自己肯定感が高いことがわかっています。さらに成績が上がったことによって、自己評価が「否定から肯定」へ変化した比率が高い、という結果が示されているのです。

    成績だけではなく「勉強に関する意識」にも関連しており、勉強が好きになった子は自己肯定感が高まっています。将来の目標が明確になった子も、ずっと不明確な子どもに比べて自己肯定感が高くなっています。

    将来の目標に向け、学力面も含めて自己肯定感が大いに影響していることが伺えるのではないでしょうか。

    問題行動の抑制

    文部科学省がおこなっている「児童生徒の問題行動島の生徒指導上の諸問題に関する調査」では、小学校高学年から中学生の間に問題行動が増加することが明らかとされています。さらに、自己肯定感が低い子どもほど、相談機関につながりにくいことが指摘されているのです。

    自己肯定感が低い場合「自分を認める」ことができないので、将来への希望を持った意欲的な行動がとりにくくなります。さらに「失敗」により、自己価値までも否定してしまいがちなのです。「自分は何をやってもダメな人間だ」との思いからやる気も出ず、最終的には問題行動などへとつながってしまうことがあるのです。
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    自己肯定感には「親の接し方」が大きく影響!家庭でできる【自己肯定感の高め方】

    内閣府の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」では、
    『「自分の親から愛されていると思う」「(親が)自分のことをよく理解してくれる」という項目と、自己肯定感との相関が強い「長所」「家庭生活への満足度」という項目の間には、強い相関がある』と示されています。

    これは、乳幼児期における「絶対的な自己肯定感」の育成において、「保護者(または保護者に相当する存在)から、自分は愛されている」という感情を受けることが必要不可欠ということを意味します。

    【乳児〜1歳】までの子どもとの関わり方のポイント

    まず、生後3か月から5か月の時期は、できるだけ赤ちゃんのそばにいてあげることを心がけることが大切です。3か月になると視覚がどんどん発達して、聴覚よりも優位になります。そこで、親子の遊びが重要になってきます。
    たとえば「いないいないばあ」の遊びでは、「困ったときに、いつでも現れてくれる存在がいる」ということを学ぶことができるのです。

    生後6か月以降は、感覚能力が高まる時期。「共感能力」を育むのに重要な時期となります。赤ちゃんにいろいろな表情を見せたり、親が赤ちゃんの表情を真似ることがポイントです。親の表情をみせることで、相手に心があることや、自分と他人とは違うことに気づき始めることができます。

    【1歳から2歳】までの子どもとの関わり方のポイント

    1歳をすぎると、脳の神経回路がほぼできあがるため「記憶」が形成され始めます。そのため、コミュニケーションをとって、たくさんの経験を積み重ねるのがポイントです。

    しかし「危ないから」といって親が必要以上に先回りして危険を防ぐことは、子ども自身が失敗を経験する機会をうばうことになります。子どもの行動を見守って、助けを求められたら手を差し伸べる、そして成功したら褒めてあげる…という過程が重要です。

    【2歳から3歳まで】の子どもとの関わり方のポイント

    2歳を過ぎてからは、親が子を「支える」時期になります。子どもを「一人の人間として尊重」して接するのが重要です。それにより、子どもは自分が「認められた人間」だと思え、そのことにより自己尊重ができ、自我も順調に発達する機会になります。

    子どもの行動に先回りしたり、子どもの言葉を否定したりせずに、しっかりと話を聞いてあげることが大切です。逆に、子どもが何か言おうとしているところを遮ってしまうと萎縮してしまい、自分の意見が言えない子になってしまうおそれがあります。何が言いたいか予想がついていても、最後まで聞いてあげる姿勢が大切です。

    【6歳まで】の子どもとの関わり方のポイント

    「子どもに幸せな人生をおくってもらいたい」という思いから、子どもへ過度に期待しすぎてしまうことがあります。しかし、その傾向が強すぎると、子どもが何か失敗をしたときに「そんな子に育てた覚えはない」「ダメな子ね」といった、子どもの存在自体を傷つける発言をしてしまう場面もでてくるでしょう。これは、子どもの自己肯定感を根本から揺るがす行動です。
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    子どもの存在自体を認めて、「あなたがいい子でも悪い子でも大好きよ」「あなたがママの子でよかったわ」といったメッセージを普段から伝えると「愛されている」という安心感が得られます。それにより、ときに強く叱ってしまったとしても、子どもは前向きにとらえ、悪かったことだけに焦点を当てて乗り越えてくれるのです。

    自己愛は子どもを支配してしまう

    親が「自己愛」にとらわれている場合、自己愛の延長線上で子どもを愛しているーということが少なくありません。「愛情」の名のもとに子どもの人格の独立性を侵し、子どもを支配しコントロールする事態を引き起こしてしまいます。

    親自身が「ありのまま」の自分を受け容れることが、自己肯定感には重要です。そして、子どもと向き合ったときには、子どもを「まるごと・ありのまま」受け入れられるようにします。それにより、子どもを支配せず付き合うことができるようになるのです。

    親子関係を気付く住空間

    親子関係を築くのには、3つのコミュニケーションがあります。
    言葉などで親の養育態度や影響を実現する「会話型コミュニケーション」、遊びなどの行為をともにする「行為の共有型コミュニケーション」、そして雰囲気や態度など「副産物として伝わる情報」です。

    子どもの年代によって、効果的なコミュニケーションが異なります。たとえば小学生時であれば、親子がともに行動する「行為の共有型」コミュニケーションが相互理解を深め、親子の絆を強くします。高校生にもなれば、行為の共有よりも「会話形」が効果的です。

    そのため、子育て期には「行為の共有」のできる住空間づくりが大切になります。ゲームを一緒にやる、一緒に家事をするなど、日常的に子どもとなにかを共有できる生活が送れる環境を目指すと良いでしょう。

    自己肯定感が低い子どもへの取り組み

    自己肯定感が低いとされる子どもに対して「自己肯定感を育む」取り組みをおこなうのであれば、子ども一人ひとりの状態に目を向ける必要があります。
    たとえば「他者評価等に基づく自己肯定感」が低い場合、その子どもの長所や努力した結果を褒めたり認めたりする機会を増やします。幼稚園児なのか中学生なのか、子どもの年齢によっても効果的な取り組みがことなるので、発達段階に合わせていくことも必要です。

    子どもと常に相談し、意見を聞き、それを尊重しながら「自分の人生の主人公は自分」と感じるようにサポートしてあげましょう。この過程は、自己肯定感の感覚を育てる大事な策になっていきます。

    自己肯定感は、子どもの幸せにつながる!

    「自己肯定感」という概念は、さまざまな角度で捉えることができる感情です。この自己肯定感について子どもが大きく注目されていますが、実は大人の自己肯定感の低さも議論されています。親自信の自己肯定のあり方も含めて、考えていく必要があるのです。

    自己肯定感を育む自尊感情は「愛される」「褒められる」「認められる」「感謝される」ことで高まります。子どもたちの自己肯定感を育む取り組みをおこなう最大の理由として、「自己肯定感を高めることが子どもの”幸せ”につながる」ということを意識しながら、今後も付き合っていくと良いでしょう。

    【参考・引用・関連リンク】
    ■金澤広明(2007)子どもの自尊感情を育む親・教師.児童心 理 61(10),944-949.

    ■高垣忠一郎(2006)「自己愛」と「自己肯定感」から考える子 育てにおける「平和」と「暴力」.心理科学研究会,心理 科学 26( 2),48-58.

    ■北浦かほる(2007)自立と信頼関係を育む居住空間―自尊感 情を高めるために―.児童心理 61(10),960-965.

    ■吉森丹衣子(2016)大学生の自己肯定感における対人関係の影響―コミュニケーションを重視して―. 国際経営・文化研究Vol.21 No.1

    ■武内健太(2017) 子供たちの自己肯定感を育む―教育再生実行会議第十次提言を受けて―. 立法と調査 No.392 参議院常任委員会調査室・特別調査室

    ■自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り開く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上(第十次提言) 平性29年6月1日 教育再生実行会議
    http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/teigen.html

    ■国立教育政策研究所による平成30年度全国学力・学習状況調査の結果
    https://www.nier.go.jp/18chousakekkahoukoku/index.html

    ■子どもの生活と学びに関する親子調査2017 ― 東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 共同研究プロジェクト
    https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5279

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