1歳の誕生日を過ぎて離乳食も後期へと進むと、断乳や卒乳について考え始めるママも多くなります。特に仕事復帰をする場合には、早めにやめてしまう方も多いようですね。

そこで、断乳や卒乳の適切な時期はいったいいつと言えるのか、またその時期を越えての授乳にはどんなデメリットがあるのかについて、世界基準やさまざまな参考文献をもとにご紹介します。さらには、断乳することによるママへのメリットや、なかなか卒乳できない時のポイントにも触れていきますので、最後までお付き合いください。

「断乳」「卒乳」「離乳食」……乳児を育てるママのお悩みは?

離乳食も進み子供も1歳を過ぎると、いつごろ断乳するべきか、その時期について気になり始めるママも多いでしょう。

1歳児をもつ母親のソーシャルメディア上での発言内容を分析した、関西福祉大学の井田准教授の調査があります。それによれば「子ども」「保育園」「子」「息子」「断乳」といった検索ワードが上位5つにランクインしており、5番目に「断乳」という検索ワードが入っていました。
関連して「離乳食」「卒乳」といった単語で検索した件数も多く、食べ物や授乳に関する悩みは多くの方が持っていることがわかります。

また、断乳について考え始めた母親において「離乳食を食べない」「おっぱいをずっと欲しがる」といった、断乳や卒乳に踏み切れない状況についても多くの方が書き込んでいます。さらに、子供が自分から授乳を中止する意思を尊重した「卒乳」にするか、それとも強制的にやめさせる「断乳」に踏み切るか、といった悩みも多いようです。
多くの母親が、断乳や卒乳に関しての悩みを多く抱えていることがわかります。

人それぞれ授乳に関する考え方も異なるため、「○歳になったら断乳」といった断定的なことは日本では特に言われていません。しかし、1歳6か月の検診にて「授乳をそろそろやめたほうが良い」と指摘を受けたという母親も多いことから、1歳頃から1歳6か月ぐらいまでに断乳や卒乳をしている子供が多いようです。

”世界基準”で見る断乳の時期ーー日本は早すぎる?


日本では1歳頃から1歳6か月ごろに断乳・卒乳をする方が多いと述べましたが、世界基準でみたとき、その時期は適切なのでしょうか。

WHOやUNICEFFは、断乳時期に「2歳以上」を推奨

WHOの「Breastfeeding(母乳育児)」という項目では「6か月から離乳食をスタートし、2歳までに完了することが望ましい」と記載しています。これは、幼児食への完全移行は2歳までに行うという意味であり、概ね2歳頃までは授乳を推奨しているのです。

また同様に、WHO「Infant and young child feeding(乳児と幼児の食事)」という項目では

”母乳は生後6~23ヶ月の子どもたちにとって重要なエネルギー源です。特に6~12ヵ月の月齢の間では子供に必要なエネルギーの半分以上を提供することができます。そして、生後12~24ヵ月では必要なエネルギーの3分の1を補うことができます。病気の子供達や栄養失調の子供たちによる死亡率も減らすことができる母乳は、重要なエネルギー源や栄養分なのです。”

と提唱しています。

必要なエネルギーの3分の1を補う母乳は、死亡率を下げるためにも2歳まで必要である、と考えられているのです。

世界の平均は4.2歳!?

母乳に関する世界的有名な著書「Breastfeeding: A Guide for the Medical Profession(母乳育児:医療従事者向け)」では、世界的に離乳している子供の平均年齢は4.2歳と書かれています。わたしたちの感覚では、離乳がとても遅いように感じますね。

早稲田大学の根ケ山教授の調査によると、理想的な断乳時期について、日本・フランス・アメリカの女性に調査した結果、

  • 日本…10.5か月
  • フランス…5.7か月
  • アメリカ…9.2か月
  • という結果でした。先進国と言われるアメリカやフランスでは、日本よりも早い時期での断乳が理想とされていたのです。

    実は、「4.2歳」という数字に関してどのような調査をしたのかについてはソースが明記されておらず、4.2歳と明記されている本文には「Before 1979~」とあるように、今から40年前のことを指していました。

    これから未来に向け、さらに女性の社会復帰も早くなってくることが予測されているため、日本でも早めの断乳になっていく傾向が進んでいくかもしれません。

    世界基準は日本の赤ちゃんにも適応する?


    1歳6か月検診において「現在、授乳はしていますか?」という設問を見た覚えのある方も多いでしょう。そのため「1歳6か月までに断乳をしていないといけない」と考える母親も多いようです。

    また、1歳6か月検診の時に授乳を続けていることを伝えると「そろそろ断乳を考えてくださいね。」と指導を受けたことのある方もいるでしょう。現在の日本では、一般的に1歳6か月ごろには「断乳・卒乳」をしているのが好ましい傾向にあるようです。

    鶴見大学の井出准教授らが、1歳6か月検診に訪れた保護者348名に、授乳についてのアンケート調査をしました。それによれば、

  • 授乳をしている小児は114名(32.8%)
  • 卒乳している小児は234名(67.2%)
  • という結果が出ています。
    半分以上の子供は、すでに卒乳している状態が多いということがわかります。

    この中で卒乳している子供を持つ保護者からは「しっかりと幼児食を食べるようになった」「おっぱいを欲しがらなくなった」という答えが多かったようです。幼児食への移行がスムーズにできていれば、子供が自然に卒乳していったという傾向がみられています。

    日本では、高品質で多種多様なベビーフードが販売されているなど、離乳食に関する情報はたくさんあります。また季節の野菜や新鮮な魚介類など、四季折々の食事を安定して楽しむこともでき、恵まれた環境にあるといえるでしょう。

    実は、WHOやUNICEFが規定する世界基準は、発展途上国やアフリカの貧しい国の子供達の現状も考慮した上での推奨時期となっているのです。これらの地域での乳児死亡270万人のうち、45%が栄養不足が関係していると推定されています。幼児の生存率の向上や幼児の発達を促進するためには、もっともっと栄養が必要です。足りない栄養素を母乳によって補うため、2歳以降まで授乳を続けることで、病気の死亡率や慢性疾患などによる危険性を低下させることができるのです。

    つまり、恵まれた環境にある日本の子供たちには、卒乳に関して「2歳もしくは2歳以上」という時期を当てはめるのは適切ではない可能性があります。必要なエネルギー源を母乳によって補うことは、あまり合理的ではないのです。

    なるべく早く断乳・卒乳するということを推奨しているわけではありませんが、インターネット上などでよく見る「2歳」や「4.2歳」といった年齢は、日本の子供には必ずしも当てはまるものではない、ということを覚えておきましょう。

    適切な断乳時期を越えての授乳、その「デメリット」とは?

    前出の井出准教授らが行った調査において、1歳6か月検診の段階で授乳している小児114名のうち、25名(21.9%)が齲蝕(うしょく)に罹患していたという結果も出ています。齲蝕とはいわゆる虫歯のことであり、口腔内の細菌が糖質から作った酸によって、歯質が脱灰されて起こる歯の実質欠損です。

    特に寝る前や夜間、欲しがる時など1日に何回も授乳していると、より羅患しやすい傾向があります。そのため、虫歯予防の観点からは、乳歯が多く生えてくる前に卒乳や断乳していることが望ましいとされているのです。

    筆者も検診時に聞いたことがありますが、乳歯が発達してきていても授乳を続けた子は、1歳6か月や3歳検診で虫歯が確認できた割合がとても多いそうです。寝る前に歯磨きをしたとしても、入眠儀式で授乳してしまうと、結局意味がなくなってしまうということなのです。

    なかなか離乳食を食べてくれない問題についても、授乳習慣が原因となっていることが挙げられます。飲み慣れている美味しい母乳やミルクの方が簡単に摂り入れる(飲む)ことができるため、子供にとっても離乳食を食べるより楽なのです。そのため、母乳やミルクで空腹が満たされると、離乳食を食べたがらない子供がでてきてしまうのです。

    また、夜泣きがひどいというお悩みも、実は授乳が原因である可能性があります。添い乳でいつも寝ている場合、眠りが浅くなるのです。「思い切って断乳をしたところ、夜ぐっすりと眠るようになった」という先輩ママの体験談もよく聞かれます。
    寝る時に欲しがる子供に対して、お乳を与えずに寝かしつけをするのは結構大変なことではありますが、子供の成長のために必要なことでもあるのです。

    授乳中のママは「骨密度」が低下!断乳で回復する?

    妊娠や授乳により、母親の骨密度が低下することが、奈良教育大学の米山教授らの研究によって明らかになっています。特に長期授乳している母親は、骨密度がより低くなってしまったり、もともと骨密度が低い女性が長期授乳した場合、もとの骨密度に戻りにくいという報告もあるのです。

    おおむね1年以内の短期間で離乳した場合には、離乳後半年ほどで回復しているという結果がありますが、長期授乳の場合は回復に1年以上必要になるなど、骨密度の回復は授乳期間によって大きく変わってしまうのです。授乳開始時、あるいは妊娠前までの完全回復には、離乳後3〜4年ほど必要な人もいました。

    長期に渡って極端な骨密度の低下が続いてしまうと、歯がもろくなってしまったり、骨粗鬆症が起こるおそれもあります。適切な時期で断乳や離乳をすることは、母体にとっても良いということが言えるでしょう。

    断乳が難しいと感じるときは


    断乳したいのに、号泣してしまって何時間も泣き続ける、全く夜寝てくれなくなってしまった……など、子供がどうしても欲しがって暴れてしまうこともあるかと思います。

    断乳する方法について多くの方が行っているのは「○日になったら、おっぱいとバイバイしようね」と、断乳をする日を決めて子供に言い聞かせる方法です。1歳前後の乳児に日付を言い渡しても理解できないと感じるかもしれませんが、子供は、母親の言わんとしていることを雰囲気できちんと感じ取っています。
    多くの子供がなかなか寝付かずに長期戦になることを想定し、次の日は休みになる金曜日や土曜日に行うのがおすすめですよ。

    また、子供にもわかりやすい”離乳を促す絵本”を読み、どうして離乳しないといけないのか教えてあげるのも良いでしょう。例えば「おっぱいバイバイ/Milky(武田 舞著)」など、子供から自然と卒乳につながるような内容となっている絵本がおすすめです。「ねんね(さこ ももみ著)」など子供がよく眠ると言われているような本を読み聞かせるなど、添い乳以外の入眠儀式を定着させるのも手です。

    まとめ

    母親・ご家庭によって、母乳育児に関する考えは異なるため、何歳まで与えるのかは個人の自由と言えます。しかし、ご紹介してきたような卒乳のメリット・そして推奨期間を越えて行う授乳のデメリットについて考慮するなら、1歳頃には卒乳を意識し始めても良いでしょう。断乳にどれくらいかかるかはやってみないとわからないため、少し早めに検討すると良いかもしれませんね。
    添い乳やミルクがなくてもしっかりと寝れるようになる習慣を身につけると、育児も楽になりますよ。ぜひチャレンジしてみてください。

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    【参考・引用・関連リンク】


    井田 歩美(2015), 1歳児をもつ母親の離乳に関連した育児情報ニーズ-ソーシャルメディアにおける発言の分析-, ヒューマンケア研究学会誌 第 7 巻 第 1 号, P21-27

    井出 正道(2016), 卒乳に関する保護者の意識調査, 小児歯科学雑誌 54(4): 462−469

    井手 有三(2005), 1歳6か月児歯科健診における授乳状況からみた齲蝕罹患に関する研究, 小 児 歯 科 学雑 誌  43(5):605-612

    Koichi Negayama, (2012), )Japan–France–US comparison of infant weaning from mother’s viewpoint, J Reprod Infant Psychol. 2012 Feb; 30(1): 77–91.

    米山 京子(2002), 妊娠および授乳後の骨密度の回復に関する縦断研究, 第49巻日本公衛誌 第6合

    WHO-Breastfeeding
    https://www.who.int/topics/breastfeeding/en/

    WHO-Infant and young child feeding
    https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/infant-and-young-child-feeding

    厚生労働省 卒乳(断乳)時期と虫歯の関係
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-014.html

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