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世でいわれる「男女の産み分け」には、さまざまな方法があります。なかにはゲン担ぎや迷信のようなものも多く、真剣に産み分けを考えている人は、情報に惑わされてしまうこともあるでしょう。希望する性別がある場合、少しでも可能性が高いものを試してみたいと思うのは当然のことです。
この記事では、まことしやかに囁かれている産み分け方法と、それに対する実データの比率とをあわせてご紹介します。また、長年にわたり、産婦人科医の指導の元、多くの方がおこなっている産み分け方法をご紹介します。
迷信?それとも効果あり?世で囁かれる「産み分け」法
産み分け方法について、「そんなことで産み分けができるの?」と思ってしまうような産み分け方法があります。広く知られている産み分け方法の中で、迷信なのか、それとも効果があるのか、実際に検証されているデータを元に真偽を確認してみましょう。
お肉をたくさん食べると「男の子」、野菜をたくさん食べると「女の子」が産まれる?!
お肉をたくさん食べていると男の子が、野菜をたくさん食べていると女の子が産まれると昔からよくいわれています。人間の身体は、肉や魚を食べて酸性へ、野菜を沢山食べるとアルカリ性へと傾く、ともいわれているからです。
それでは、どれだけ食べたら性比が発生するほど傾くというのでしょうか。江戸時代などはほとんど肉を口にしていませんでしたが、男性と女性の比率は偏っていません。また、草食動物と肉食動物など、極端な場合でもオスとメスは産まれています。
妊活の時期だけ食べ物を変えたところで、産み分けできるまで持っていくのは難しいといえるでしょう。
高カロリーの食事を取り入れると、56%で男の子が産まれている
母親の栄養が十分であると、男(オス)が出産されるということは、無脊椎動物や馬、牛などでも研究がされており、広く知られています。
実際、先進工業国では産まれてくる男児の確率が少なく、さらに、平均的なエネルギー摂取量も少ないことが判明しているのです。これは多くの女性の「朝食を抜いている習慣」が原因とされています。
初妊婦740人の妊娠前・妊娠中の食習慣の記録が、英国のエクスター大学とオックスフォード大学によってまとめられ、王立協会から発表されています。
この調査によれば、1日当たりの平均カロリー摂取量について、男児が居た女性は平均2,413カロリー、女児がいる女性は平均2,283カロリーとなっています。さらに、エネルギー摂取量が多い女性の56%が男児であったのに対し、エネルギー摂取量が少ない女性は45%しかいなかったのです。※(1)
また、体外受精の研究では、ブドウ糖を高水準で摂取することでオスの胚の成長と発達を促すことが知られています。
確率の数値で大きな差はあまりありませんが、男の子を授かりたい場合には、ダイエットはせずにしっかりと食事を取るのがよいでしょう。
中国式産み分けカレンダーで男の子と女の子が産み分けられる?!
お母さんの数え年と受胎月を元にし、男女どちらが産まれるのか予測することで産み分けをおこなう「中国式産み分けカレンダー」。700年以上前の「元」の時代、中国の科学者たちが男女の出生記録を元に統計としてまとめたものです。
北京の研究所でその原本が保管されており、中国をはじめ世界中に広く知られています。しかし、あくまで統計であり、全くの医学的根拠はありませんので参考程度にとどめておくのがよいでしょう。
同じように「ブラジル式産み分けカレンダー」といって、数え年で予測する方式もあります。
男性が高齢になると精子の変化により、男児の出生率が下がる?
アメリカ・カリフォルニアにある不妊治療院(Reproductive Technology Laboratories)が、5081人の精液を調査した研究結果があります。それによると、男性は35歳から毎年1.71%精子数が減っていき、精子の奇形率は41歳から0.84%ずつ毎年増えているというのです。※(2)
ここでいう「奇形」というのは、正常な精子ではない、妊娠に至らないことの多い精子のこと。そして44歳には精子の運動率が下がり、56歳になると、男の子になる「XY精子」が減少します。
このことから、男児を産みたい場合には、できるだけ早く妊活に取り組むことが推奨されています。
SEやパイロットは女の子が産まれやすい?!
SE(システムエンジニア)など、パソコンを使う仕事をしていると「電磁波」の影響で、パイロットは「放射線」を多く浴びている影響で、いずれも女の子が産まれやすいなどといわれています。
しかしSEでなくても、いまや多くの方がPCやスマートフォン、テレビなど、電磁波を出している機器に接した生活をしているのが現状です。また、広島や長崎の被爆2世を調査したところ、男女比に偏りがなかったことが明らかになっています。※(3)
そのため、特定の職業によって性別の偏りが出ることは、ほとんどないといえます。
ストレスが多いと女の子の出生率が上がる?
今までさまざまな事件や災害のあとに出生した男女比を統計でみてみると、男児よりも女児の出生比率が上回ることが数々の研究で明らかになっています。※(4)
ニューヨーク医科大学のフロレンシア博士が、科学誌(Human Reproduction)に発表した研究によれば、2010年にチリで発生した地震前後で統計調査したところ、通常は100人中51人は男児が産まれているのが、地震後は100人中45人の男児が出生。5.8%低下したというデータがでています。※(5)
また、カリフォルニア大学のラルフ教授が科学誌(American Journal Of Human Biology)に発表した数値でも、2011年の東日本大震災後の出生した男女比を統計調査したところ、男児の出生比率が低かった結果となっています。※(6)
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのウィリアム博士によると、大きなストレスがかかっている男性は「テストステロン」と呼ばれる男性ホルモンの一種が減ってしまうとのこと。すると、男児となる精子内に含まれる「XY染色体」の数が減って質も下がるため、男児の産まれる確率が減るのではないかと考えられているのです。※(7)
そもそも、赤ちゃんの性別はどのように決定するのか?
赤ちゃんの性別は、妊娠期間中に変化するのではなく、受精した段階で決定します。それは、母体にある卵子ではなく、精子によって変わるのです。
赤ちゃんの性別は、どのようにして決まるのでしょうか。
精子にはXX精子とXY精子がある
23組・46本ある染色体の中で「性染色体」と呼ばれる23組目の染色体が、性別を決定します。2本ある染色体の組み合わせがX染色体とX染色体の場合は女児が、X染色体とY染色体の場合は男児になるのです。
卵子にはX染色体しかありませんが、精子にはX染色体かY染色体を持っている精子があり、それぞれXX精子とXY精子と呼ばれています。射精された約2~3億個の精子のうち、1つの精子が1つの卵子と融合して受精卵となりますが、その出会った精子によって男女が決定されるのです。
XX精子とXY精子の違いとは?
以前は「頭の部分の大きさでXX精子、XY精子の見分けがつく」などともいわれていましたが、実際はあまり差がないため、見た目で判別するのは困難です。
しかし、XX精子とXY精子には異なる性質があります。女児になるXX精子は酸性に強く、寿命が長い(最大約72時間)ことが特徴です。それに比べて男児になるXY精子はアルカリ性に強く、寿命が短く(約24時間)なります。しかし、XY精子は運動能力が高い=泳ぐのが早いので、いち早く卵子へと到達。射精されたときの精子の数も、XX精子より多いというポイントがあるのです。
一方、XX精子は運動能力は高くはありませんが、過酷な酸性の環境でも生き抜けるという特徴があります。
ちなみに卵子の寿命は、排卵してから最大24時間。XX精子とXY精子の性質の違いをうまく活用して、産み分け法に応用することができるとされています。
有力とされる「産み分け」の方法とは
現在、産み分け方法はさまざま取り上げられています。セックスをするタイミングを取る方法から、薬剤などを使った方法、さらには最新の技術を駆使した方法などです。
以下に、代表的な産み分け方法を紹介していきましょう。
多くの産院で行われている産み分け 「シェトルズ法(shettles method)」
1960年代にLandrum B. Shettleが発案。David Rorvikとの共同出版「How to Choose the Sex of Your Baby」で発表された方法です。
世界中で30年以上活用されており、自然な方法なので安心して取り組むことができます。これは「精子の運動性能の差と耐性」という2つの特徴を利用した方法です。※(8)
まず1つ目は、夫婦関係を持つタイミング。
男児を産みたい場合には、より早く卵子に到達させることから、排卵した直後に行為をおこなう必要があります。女児を希望している場合には、排卵日の2.5~3日前にセックスをしなければなりません。排卵日ころには、男児になる精子が寿命により死滅している、というものです。
2つ目は、射精する際の挿入位置を変えるものです。
男児になるXY精子は、早く卵子に到達するため、そして酸性の状態に最小の時間で酸性状態から脱するために、より深く挿入を。反対に、女児になるXX精子を到達させるためには浅い位置で射精。そうすることで、生命力の弱いXY精子を卵子まで到達させないようにしているのです。
排卵日から数えてセックスをするタイミングをはかることから、「タイミング法」と呼ばれており、多くの日本の産婦人科ではこの手法が広く使われています。実際に病院では、診察によって卵子の状態から排卵が起こる日付を医師が測定し、いつセックスを行うのか指導されるのです。
成功率は75~90%と主張していますが、確実に精子をコントロールできるわけではないので、実際にはそれより低いともされています。
日本で唯一許可されている産み分け医療の「パーコール法」
「パーコール法」とは、人工授精などを行う際、精液から上質な精子を取り分ける方法の1つです。また、女の子を産み分けるための方法としてもおこなわれています。
パーコールと呼ばれるショ糖の一種である液体に精液を入れ、遠心分離にかけてXX精子とXY精子を分離します。これは、XX精子の方が、XY精子より重いことを利用しています。
もともとは畜産分野で使われていた技術でしたが、2006年から認められて使われるようになりました。
しかし、実際は確実に女児が産まれるXX精子を選びきることはむずかしく、男児を希望する場合は70~75%、女児を希望する場合は60〜65%という成功率といわれています。また医療機関によって異なりますが、1回当り数万円、そして妊娠するまで何度もおこなう必要も出てくるため、多額の費用が必要です。
男児の産み分けに使われている「リンカル」
「リンカル」とは、リン酸カルシウムのことであり、サプリメントとして分類されています。もともとは先天的な異常を予防するために作られたものですが、男児の出生率が高いというデータがあることから、服用が推奨されています。
病院でも、まず男児を希望する場合にはリンカルを2ヶ月間毎日服用し、そのあとに産み分けをスタート。産み分け医療として有名な「杉山産婦人科」の理事長である杉山カー医師も推奨しているリンカルですが、文献などはなく、なぜ男児が多く出産されているのか解明されていません。
医師らによる産み分けの研究グループ「SS(Sex Selecton)研究会」が監修している製品も販売されています。
「産み分けゼリー」を使用する
リンカルと同様、産婦人科の医師らによる産み分けとして使われているのが「産み分けゼリー」です。
男児を希望する場合には「グリーンゼリー」、女児を希望する場合には「ピンクゼリー」が使われます。
グリーンゼリーは膣内の環境をアルカリ性に、ピンクゼリーは酸性に保ちます。これらは、XX精子とXY精子の耐性の違いを利用し、より確実に、酸性もしくはアルカリ性に保つ方法です。挿入の5分ほど前に、付属の注射器によって、ゼリーを膣内へ注入します。原料は食品ベースなものであり、ピンクゼリーはビネガー(酢)、グリーンゼリーは重曹(ベーキングパウダー)が主成分。安全性も高く、安心して使用が可能です。
ただし、産み分けの確率は100%というわけではなく、また性交したからといって必ず妊娠するわけでもありません。購入する場合には、インターネット等では類似品なども販売されているため、安全性が保証されている病院で購入するのがおすすめです。
アメリカで主流の「O+12法」
アメリカでは、「シェトルズ法」よりも多くの方がおこなっている産み分け方法です。「O」はOcligation(排卵日)の略字、「+12」は12時間後という意味があり、排卵日から12時間後に性交することで女児の産み分けができるという方法です。※(9)
もともとはシェトルズ法をテストするためにおこなわれてきた調査でしたが、排卵日の3~5日前に性交をしたのにもかかわらず、ほとんど男児を受胎したことから、論破するというかたちでできた方法です。
主な方法は、男性はすくなくとも7日間は射精を行わず、排卵後の8~20時間後に性交をおこないます。最も重要なのは、排卵の時間を正確に知ることです。そのため、基礎体温や排卵検査薬、または病院でチェックしてもらうなどが必要になります。
成功率が高いと主張されていますが、自然な方法を利用しているため、必ず女児を妊娠できるとは限りません。
産み分け100%は不可能ー少しでも確率を上げていくために
今回、男女の産み分けについて考えてまいりました。現在日本産婦人科学会では「シェトルズ法」を使った「タイミング法」、そして「パーコール法」にくわえて、成功率を上げるために「リンカル」や「産み分けゼリー」が併用されています。
自然な方法から男女を産み分けるという産み分け方法は、100%確実なものではありません。そこで、産み分けを考えている方は、出来る限り確率を上げるためにも、検診を受ける産院の先生と相談し、無理のない範囲で自分に合ういくつかを併用してみるのがおすすめです。同時に、妊娠しやすい身体作りをするなど、無事に出産できるよう体調管理もおこなっていく必要があるでしょう。
【参考・引用・関連リンク】
※(1) https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2008.0105
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/7358384.stm
※(2) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23809502
Stone BA1, Alex A, Werlin LB, Marrs RP.(2013) “Age thresholds for changes in semen parameters in men.”, Fertil Steril. 2013 Oct;100(4):952-8.
※(3) https://www.rerf.or.jp/uploads/2017/05/FOCSreportJ.pdf
※(4) https://academic.oup.com/humrep/article/27/2/558/2919304
https://www.futurity.org/pregnancy-stress-may-mean-fewer-boy-babies/
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ajhb.22414
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23754635
https://academic.oup.com/humrep/article/19/6/1250/2356532
※(5) Florencia Torche and Karine Kleinhaus(2012)
“Prenatal stress, gestational age and secondary sex ratio: the sex-specific effects of exposure to a natural disaster in early pregnancy. Human Reproduction”. Volume 27, Issue 2, February 2012, Pages 558–567.
※(6) R. Catalano T. Yorifuji I. Kawachi(2013)”Natural selection In Utero: Evidence from the great East Japan earthquake”.Am J Hum Biol. 2013 Jul-Aug;25(4):555-9. doi: 10.1002/ajhb.22414. Epub 2013 Jun 10.
※(7) William H. James(2004)”Further evidence that mammalian sex ratios at birth are partially controlled by parental hormone levels around the time of conception”, Human Reproduction, Volume 19, Issue 6, June 2004, Pages 1250–1256,
※(8) https://en.wikipedia.org/wiki/Shettles_method
※(9)
John T.FrancePh.D.*Frederick M.GrahamM.B., B.S., M.R.C.O.G.LeonieGoslingR.N.Philip I.HairM.Sc., (1984)”A prospective study of the preselection of the sex of offspring by timing intercourse relative to ovulation”, Fertility and Sterility
Volume 41, Issue 6, June 1984, Pages 894-900
■産み分けネット https://www.umiwake.jp/boy
■Dr. Richard Marrs’ Fertility Book: America’s Leading Infertility Expert Tells You Everything You Need to Know About Getting Pregnant
著者:Richard Marrs 出版社:Random House Publishing Group.
■How to Choose the Sex of Your Baby: Fully revised and updated (English Edition)
著者:Landrum B. Shettles、David M. Rorvik 出版社:Harmony
[翻訳版]
■マンガでわかる!男女産み分け完全ガイド(主婦の友ベストBOOKS)著者:杉山カー 主婦の友社