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子どもには、挫折や辛いこともあるだろうけど、それを乗り越えて、いい人生を送って長生きをしてほしい・・・

親としてはこのように願うばかりです。
寿命については生物学的にもたくさん研究・議論が進んでいますが、今回は、長寿につながる性格について紹介したいと思います。

その人の人生を形作るものと言っていいほど、「性格」というのは人生に影響を与えます。性格は幼いころからの親との関わり、兄弟姉妹との関わり、他の親族や友達はもちろん先生や地域の人たち、さらには住んでいる場所、環境、経済的要因などなど、様々な要素が影響を与えているのでしょう。

1921年、スタンフォード大学心理学教授のルイス・ターマン博士がある研究を開始しました。サンフランシスコの小学校に通う優秀な子どもたち約1,500人(当時10歳前後の男女)を対象にしたリーダシップに関する研究です。
しかしこの研究は現在、別の研究の重要な資料として、思わぬところでその価値の高さが認められています。

研究初期の1922年、ターマン博士は対象の子どもたちの両親や担任の教師たちに聞き取り調査を行っています。内容は多岐にわたっていたようで、知性や意志力、道徳心といった項目から美的感覚や身体活動、社交性など包括的で、性格については13段階もの評価基準がありました。

この研究は、その後も定期的に追跡調査を実施し、仕事や幸福度について面談を行い詳細に内容がまとめられました。さらにターマン博士が亡くなった後も、別の研究者たちがこれを引き継ぎ、そして近年、このターマン研究資料を基に、心理学教授であるハワード・S・フリードマンとレスリー・R・マーティンの両氏が「The Longevity Project」(邦題『長寿と性格』)をまとめ上げたのです。

実に研究開始から80年の追跡調査を行ったという、とんでもない研究です。
長期間に渡り、ひとりひとりの人生の過程をつぶさに記録してきたことで、子どもの頃の性格や環境が、将来にどのような影響を与えるのか、統計的に知ることができたというわけです。

“長生きできる性格”とは?


この研究成果から、まさに長生きできる性格というものが見えてきました。
先に結論から言うと、長生きした対象者たちの共通する性格はなんと「勤勉性」だと指摘しています。(※英語では「conscientiousness」となっており、心理学の世界では「勤勉性」の他「誠実性」や「良識性」と訳されているようです。)

勤勉性の高い人は、まず自分の身を危険にさらすような行動は避けます。度を過ぎた喫煙や飲酒はしないし、体調が悪ければ医者に診てもらう。また危険な車の運転などもしない。どういうわけか、勤勉性の高い人は病気にもかかりにくい傾向があるという。さらには、勤勉性の高い人は自然と健康的な選択をし、良好な人間関係に恵まれ、満足できる仕事にもついているという。

もちろんあくまで傾向であり、全ての人に当てはまるわけではないと思いますが、興味深い分析データと言えるでしょう。

“意外”と長寿につながらない性格は?


一般的には、陽気で社交的な性格の人の方が長生きと言われます。
しかし子どもの頃の聞き取り調査で、社交的・外交的と判断されていた子どもは、それほど長生きではなかったというのです。

その理由をこのように分析しています。
社交的な子どもは、大人になってから「飲酒」や「喫煙」の機会が増える傾向にあると言います。また楽観主義がマイナスに作用するときがあり、危険を顧みない行動に出たり、重大な健康リスクを見逃す可能性が高くなると。
ご長寿の人に、長寿の秘訣を聞けば「気楽に考えることさ!」みたいな答えが返ってくるのが常ですが、誰しも年を取れば丸くなり、楽観的な考えになるもの。実際の人生は紆余曲折があり、そのたびに悩みながらも分別のある判断をしてきたに違いないと思います。

では慎重な方がいいのかというとそうでもないようです。
若いころに「心配性」とされた人たちは、病気がちで不幸な老後を送りやすいとする一方で、寿命に関して言えば「心配性」の方が有利に働くこともあるという。それは神経質な性格の持ち主の方が、早死にするリスクが大きく下がる場合があるからです。

しかし、少しの失望で「もう人生終わりだ~」となってしまうような、極端な悲観論者は、他の人に比べ「事故や事件」の項目で亡くなる割合が明らかに高くなっていました。つまりは自殺や殺人、交通事故による死因が多かったのです。これは衝動的な行動に走りやすい結果だと指摘されています。

早期教育は寿命を縮める可能性


アメリカと日本の教育制度の状況が異なるので、そのまま当てはまるとは言い難いですが、本質の部分では日本においてもあてはまるような気がします。

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普通に小学校へ進学する年齢で小学校へ上がった子どもに比べ、早くに小学校へ上がった子どもたちの方が長生きできなかったという事が分析の結果出てしまったという。
確かにデータはそのように示している・・・でもその明確な原因や要素はよくわからない。

ただ、周りより早くに新しい環境に適応しなければならない為に、精神的なつまづきが多くなるのではないかと推測されています。幼稚園の段階で、小学校で学ぶ内容を先に習得することは、競争社会の中で一見有利なように見えます。現代的な価値観の中では、早いことが有利に働くと考えがちですが、実際はその分、本人の苦労が増える可能性は否定できません。それが性格や精神面に影響を与えるとしても不思議ではないでしょう。親の思いばかりで、幼いころから頑張らせ過ぎるのも問題なのかもしれません。

親の死 or 両親の離婚


親が亡くなることも、両親が離婚してしまう事も、どちらも子どもにとっては重大な出来事で、心的なストレスを与えるのは当然だと言えます。その出来事は大人になってからも影響するのでしょうか。

驚くことに「寿命」という面で見ると、子どもの頃に両親の離婚を経験したグループの方が、そうでない子どもたちと比べ、平均して5年寿命が短かったという結果になりました。親の死も同様につらい経験のはずですが、寿命との関係性は見られなかったといいます。

ではなぜ両親の離婚の方が、寿命が短くなったのか。
経済的に困窮して問題を抱えるケースが多くなるからではないかと、経済的理由が最初に頭に浮びますが、実際には経済的理由よりも明確な要因が見つかりました。
その原因は、男女ともに明らかに不健康なライフスタイルを選ぶ傾向があるということでした。家庭環境が不安定になることで、喫煙や飲酒に走る傾向が強まります。
また、男性ではのちのキャリア形成で失敗すると、この傾向がさらに強まり短命になりやすい。女性では離婚家庭で育った場合、ヘビースモーカーになる確率が、他と比べ2倍にも高くなるという結果になりました。

さらに離婚家庭で育った子供たちは男女ともに、自身も離婚する可能性が高くなっています。大人になってからも安定した家庭を築けず、さらに不健康なライフスタイルに陥るという悪循環が生まれてしまいます。

100年近く前にスタートした研究の為、時代背景が違うという意見も当然あると思います。離婚の理由にもよるので、子どもにとって両親の離婚が健康にどの程度影響を与えるかは断定できませんが、少なからず影響があると考えた方が良いでしょう。
しかし一方で、両親の離婚を経験しながらも健康長寿を実現している対象者もいます。この人たちはどんな人生を送っていたのか。

まず大人になってから円満な結婚生活を送っていることが、長寿へつながる一因と考えられます。さらに大きな共通項として、「自分の仕事に満足」していたという事でした。
子ども時代のつらい経験も、後の人生で満足いく生活を送ることができれば、克服できるという事を示しています。

当たり前のようですが、これは非常に重要なポイントと思います。色んな事情があったとしても、決して投げやりにならず、やりがいを感じられる仕事に就く努力をしたり、関わる人と良好な関係を築けるように配慮したりすることが、人生を好転させるということでしょう。

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その他には・・・
仕事を引退して、のんびりと老後を過ごす人と、高齢になってからも仕事をし、生産性の高い人では、明らかに後者の方が健康で長生きしているそうです。

これはどのような働き方をしているのかにもよると思われます。高圧的な職場で、一方的に仕事を命令され、やらされていると感じる仕事であれば、間違いなく寿命を縮めると思います。しかし「責任感」と「やりがい」をもって自主的に取り組める仕事であれば、寿命が長くなるのもうなずけるところです。

さらには社交ネットワークの広がりにも言及しています。
ご近所づきあいから、趣味のサークル、様々な勉強会やボランティア活動に参加している方が長寿につながるようなのです。これも当たり前のように感じるところですが、非常に重要な要素でしょう。人と関わる機会があれば、深く落ち込んでも励ましてくれますし、身体の不調を訴えれば、病院へ行くことを促してくれるでしょう。社会と関わりのない孤独な人は、悩みを打ち明けられず、他者からのアドバイスをもらいにくい状況が生まれます。長い人生で見れば相対的に、長生きできないような気がします。

社交ネットワークの広がりについて、なるほどと感じる指摘がありました。
周りの人たちから、「愛されている」「気にかけてもらっている」といった感情よりも、誰か「他人を助ける」という行為が長寿につながっているという指摘です。
他者の役に立つという事が、生きる意味や自分の存在価値を強く意識させるのでしょう。何かお手伝いをしたり、相談に乗ってあげたり、お世話をしている側の方が実は恩恵を得られるという事になりそうです。

長生きできるかどうかは誰にも分かりません。ただし、この調査結果を見ると明確な傾向があることは事実として見えます。

まとめると長寿の秘訣は、「極端に悲観的な考えを持たず、勤勉に、思慮深く物事を判断する。そして、やりがいを感じる仕事し、属するコミュニティでは役割を担って他人を助ける。」ような性格の持ち主となるでしょうか。
どのような考え方を持ち、どのような性格を身につけるかは、幼いころからの親の態度や行動に影響を受けるところが大きいのではないかと感じます。

救いなのが、幼いころの評価では「勤勉性」が低いとされていた子ども達でも、将来、性格が少しずつ変化し、長寿になっているケースも紹介されていることです。確定的なものではなく、改善する余地のある柔軟性も残されているという事です。

現実には、人間とは不安定な要素がたくさんあるわけで、すべてにこのような性格、考え方で人生歩めるわけではありませんが、少しでもこのような考え方を持てるように日々意識することが長生きし、良い人生を送れるかどうかを決めているのかもしれませんね。

【参考・引用・関連リンク】

『長寿と性格』 ハワード・S・フリードマン (著)レスリー・R・マーティン (著)桜田 直美 (翻訳)  清流出版

Image courtesy of FreeDigitalPhotos.net

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