注)個人差があることを前提にお読みください。

月経周期の乱れ


一般には「生理不順」とよく言われますが、月経周期の乱れは妊娠にはよくない・・・なんとなくそうだろうとは感じていても、少しくらいは別に大丈夫じゃないの?と思ってしまうもの。
しかし、月経周期の規則正しさこそが妊娠できる大そうです切な条件と言えます。

正常な月経周期とは?


まず正常な月経周期とはどれくらいなのでしょうか?
日本産婦人科学会の規定では、周期が39日~3ヶ月以内のものを「希発月経」と呼び、周期が延長しているというよりも不規則な状態。逆に周期が短縮しているものを「頻発月経」と呼び、24日以内の月経周期の場合これに該当します。このことから、正常な月経周期の範囲は25日~38日ということになります。(※ただし、25日~38日の範囲内であっても、この範囲内で大きなばらつきがあるようなら「不整周期」と呼ばれています。)

月経周期に異常がある場合、妊娠が難しくなるのはホルモン分泌が密接に関わっているからです。女性の身体の中で起きている変化を、時間を追ってみてみるとよくわかります。

卵巣の中に「卵胞」という構造がたくさんあり、その中に卵細胞がそれぞれに入っています。月経周期の始まりは、脳の下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されるところから始まります。名前の通り卵胞の成長を刺激し成熟させるホルモンで、排卵に向けて卵巣の中で卵胞が成長していきます。そして、いくつかの卵胞が成長しますが、一つを残してその他の卵胞は成長をやめてしまいます。

正常月経における周期的変化

出典『月経のはなし-P13 序章-図2』
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同時に卵巣では卵胞ホルモン(エストロゲン ※エストラジオールはエストロゲンの一種)が分泌され、子宮内膜の細胞分裂を促進し、妊娠できる状態を整えていきます。卵胞ホルモンの分泌は、排卵の数日前にピークを迎え排卵とともに減少します。

卵胞ホルモンの減少と入れ替わりで、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が一気に増え、受精・着床しやすいように、また受精卵の発育が滞りなく行われるように、子宮内膜の状態を整えていきます。

基礎体温は、排卵の直前頃から0.3~0.5℃程度上昇します。正常な周期では12日ほど高温相が続きます。16日以上高温相が続くようなら妊娠の可能性が高いと言えます。逆に10日未満の場合、黄体ホルモンの分泌量が不足していると言えます。この場合、黄体機能不全という不妊の原因のひとつと考えられます。

以上のプロセスからも分かるように、女性の体の中では常に月経のサイクルにあわせて、各種のホルモンが分泌され、体温を調節しバランスを保っています。月経周期が不規則だという事は、このホルモンバランスが崩れていることを意味します。つまりは、卵胞の成熟、排卵、受精、着床といった一連のプロセスの途中に問題が起こる可能性が高くなってしまいます。

ちなみに・・・
女性に多い「片頭痛」ですが、約半分が月経と関係していると言われます。月経開始前の2日~月経開始後の3日の間に起こることが多く、月経時に女性ホルモン(エストロゲン)の血中濃度が急に低下することによって、発症の誘因となるようです。

また、こちらも女性に多い「骨粗鬆症」も月経と深くかかわっています。
日本における骨粗鬆症の罹患者数は約1,100万人と推計され、そのうち女性が80%以上を占めるとされています。平均的な日本人では45歳で骨量の低下が始まり、70歳で骨粗鬆症となります。女性の骨密度は30歳代をピークに、閉経期に徐々に下がり始め、閉経後3~5年で低下が加速していきます。
ここでも女性特有のホルモンバランスの変化があります。
一般的に女性ホルモン(エストロゲン)は骨形成を行う細胞である「骨芽細胞(こつがさいぼう)」を刺激すると言われています。その為、閉経により女性ホルモンの分泌量が減ると、骨の形成活動も低下してしまうのです。

また、女性ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が低下したり、バランスが崩れることによって、「うつ」や「気分障害」になる可能性が高まり、「てんかん発作」が起きやすくなるなど、さらに女性特有の「子宮内膜症」や下腹部に激痛を訴える「子宮腺筋症」などの症状が発生しやすくなります。下腹部の激痛や出血の異常を感じれば、すぐに婦人科へ受診することが大切です。

少し脱線しましたが、女性の生殖はもちろん、健康というものは「月経の質」に左右されると言えます。

女性の身体の中で起こっている月経のプロセスは、人智を超えた精妙なバランスの上に成り立っています。進化の過程においてこのようなプロセスを完成させてきたということ自体が神秘の塊でしょう。しかし現代は、自然との調和の薄れた時代となっており、この見事なバランスを崩れさせてしまう原因がたくさん日常の中にあります。

月経周期を整えるには?


特に、この月経周期を正常にし、ホルモンバランスを整える上で重要なことは、食事・睡眠・ストレスでしょう。
本来、生物として本能的に備わっている生命活動を取り戻す必要がありそうです。

高脂肪のものや糖分が多く含まれるもの、アルコールの取り過ぎ、暴飲暴食、喫煙などは避けた方が良いのはすぐに想像がつきます。過度な肥満になれば、高血圧・高血糖になり、妊娠時に「妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)」にもなりやすくなります。

睡眠についても、身体の細胞修復に欠かせない時間であることはもちろん、昼と夜の規則正しい生活による明暗の切り替えで、不規則な生理周期が正常に戻るという研究結果もあります。脳の松果体から分泌されるメラトニンという神経伝達物質は、眠りを誘うだけでなく、月経周期とも関係していると考えられています。

つまり本来人間は、夜は暗い中でしっかり睡眠をとることで、身体の調子が整えられる生き物なのです。寝る前の強い光の刺激は避けるべきでしょう。寝る直前までのPCやスマホチェックは止めないといけませんね・・・(^^;)

そして、ストレス。
ストレスは、我々が認識しているよりはるかに人体に悪影響を及ぼすことが分かっています。血圧の上昇又は低下、自律神経系へのダメージ、ホルモンバランスの乱れなど、現代人の多くが、何らかの精神疾患を抱えているとまで言われる現代において深刻な問題です。

ストレスに関して、戦時中に多くの女性が無月経になり、戦争終了後1年以内に正常な月経が始まったという報告もあります。過酷なストレス下において、神経やホルモンバランスに悪影響を与えるのは想像に難くありません。ただ現代では、一時的なストレスよりも慢性的なストレスの方が、より深刻な状況と言えます。主に仕事面、経済面、人間関係等で現代人の精神は疲弊しています。

月経周期の乱れは、日々の生活と精神の乱れを反映する鏡。妊娠できる正常な月経周期を維持するためには、日々の過ごし方を見直す必要がありそうです。

【参考・引用・関連リンク】
『月経のはなし』 武谷雄二(著) 中央公論新社(中公新書)

『医者も知らないホルモン・バランス』 ジョン・R・リー(著) 中央アート出版社

『日産婦誌52巻9号』
高齢不妊婦人の問題点 ②卵巣機能不全

『日産婦誌52巻9号』
更年期の他科疾患 ②骨粗鬆症

記事トップ画像の出典『Wikipedia-基礎体温』より
月経サイクルにおける卵胞の変化の様子

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