未就学児を持つママ同士の会話では「足し算ができるようになった」「簡単な漢字が読める」など、ほかの子供の成長の様子を耳にすることも多くなってきます。
そうすると「ウチの子はこのまま小学校に入学して大丈夫なのか?」「家庭学習している子もいる中で、ウチはどれくらいの学習レベルなんだろう?」と、周りと比べて心配になることもあるかもしれませんね。

この記事では、就学前にぜひしておきたいことを、研究論文や「勉強できる子のママがしていること 12才までの家庭教育マニュアル」の書籍などを参考にご紹介していきます。

何もしてないの、ウチだけじゃないよね…?家庭教育の現状

ベネッセ教育総合研究所が行った、家庭教育の現状についての調査結果があります。ここでは、幼児(年少児〜年長児)の保護者に対し、家庭教育の状況についてアンケートを行いました。

ひらがなやカタカナの学習について、家庭内で一緒にする頻度を調査したところ、

  • ほとんど毎日……8.4%
  • 週に3~4日……13.7%
  • 週に1~2日……29.0%
  • 月1~3日……21.9%
  • ほとんどない……26.4%
  • という結果となっています。
    年齢別に平均日数をみてみると、年少児は1.2日、年中児は1.7日、年長児は1.9日と少しずつ増えていました。

    家庭の約半数において、週に1日以上は家庭内でひらがなやカタカナの勉強をしていることが明らかとなったのです。

    ちなみに、ほとんど勉強していないという家庭も4分の1ほどありますが、この調査を行ったのは首都圏であることに注意が必要です。首都圏の場合、家庭学習をせず、通塾させるなど習い事として勉強をさせている保護者も多いからです。
    それも踏まえて、ほとんど毎日家庭勉強しているという家庭は約1割弱であるという結果を見てしまうと、「私の子供も何かしないと……」と焦ってしまうかもしれませんね。

    未就学児の「良い学習環境」は、就学後の学習効率をアップさせる!?


    未就学児にとって”絶対に勉強が必要”という決まりがあるわけではありませんが、小学校に入る前から学習環境を整えておくと、小学校にあがってからの学習効率が向上するといわれています。

    ノーベル経済学賞の受賞経験もあるジェームズ・ヘックマン教授らは「就学後の教育の効率性を決めるのは、就学前の教育にある」という論文を発表しています。
    この論文は「ペリー就学前教育プロジェクト」という、約40年にわたるアメリカでの調査が元になっており、調査対象となった未就学児が大人になってからも追跡調査されている大掛かりな調査です。

    この調査では、経済的に恵まれない3歳〜4歳のアフリカ系アメリカ人の子供に対し、平日の午前中は幼稚園で教育を、そして週に1回90分、家庭訪問での指導を行いました。この就学前教育を2年間行い、就学前に教育を受けた子供たちと教育を受けなかった同等の経済的境遇にある子供たちとの間での経済的な差について調査しています。
    彼らのその後の学歴、所得といった経済状況や生活の質の違いについて、追跡調査したのです。

    その結果、就学前教育を受けた子供たちは受けなかった子供と比べて、学歴や所得・雇用などの面で大きな効果があったことが明らかになったのです。
    就学前からの学習に対する意識の違いを子供へ身に付けさせることで、その後の人生にも大きな影響があるということがわかりました。

    ただし、ここでは学校で習うような教育というわけではなく、”アクティブラーニング”といった子供たちの自発性をうながすような教育法が採用されてもいました。そのため、必ずしも小学校入る前に、算数や漢字といった高度な勉強をさせる必要があるというわけではありません。

    子供が興味を持ったことなどを遊びの延長線上で良いので、「学ぶ」という姿勢を習慣づけ、子供の意識へ良い影響が与えられるように環境を整えてあげることがポイントとなるのです。

    通塾しなくても大丈夫!家で両親ができることから関わって

    周りに未就学児が通える塾がない、共働きで塾への送り迎えができない……など、通塾できない方も多くいらっしゃることでしょう。
    しかし前の章でも述べた通り、一番大切なのは「具体的な勉強」でなく「学ぶ姿勢」を身につけさせてあげること。つまり塾へ通わなくても、家で両親ができることから関わってあげることが重要になってくるのです。

    未就学児が挑戦できる勉強には「国語」や「算数」などいろいろな科目があるものですが、すべての基本となる「文字」は、家庭学習として取り入れやすいのではないでしょうか。子供としても、自分で読める文字が増えてくると、一人で絵本を読んだり世界が広がっていき楽しいものです。

    家庭では、長いスパンで気長に教えていくのが鍵となってきます。

    「文字」に興味を持たせよう!

    子供は興味がわかなければ、見ようともしないものです。文字についても、興味が持てなければ「覚えよう」という気持ちにもならず、しつこくやりすぎると拒否しだしてしまうこともあります。

    文字を覚えるときは、子供が「文字を自分で読めるようになった!」という自立経験をさせてあげることが重要になってきます。やみくもに口に出させて暗記させるのではなく、すこしずつステップを踏みながら覚えていくようにしましょう。読めたことを思いっきり褒め、子供に自信を持たせていくのがポイントです。

    文字を覚えるなら「名前」から

    自分の名前が書かれたひらがなは、幼稚園や保育園の名札、荷物など、子供が目にするところに書いてあることが多いため、頻繁に目にするものです。何度も自分の名前を見ていると、次第に1文字ずつわかるようになってきます。そのうち、自分の名前が書いてあるひらがなを見ただけで「○△□ちゃんの○だ!」といった反応を示してくるでしょう。

    同様に、身近にいる兄弟姉妹やお父さん・お母さんの名前、お友達の名前など、目で見たり耳で聞く機会が多い名前から、文字を覚えるのがおすすめです。同じひらがなを目にするだけでそれが”復習”になるので、自然と文字の形を覚えていきます。

    筆者の子は、散歩や通園のとき、駐車している車のナンバープレートのひらがなを読むようになっていました。普段の生活の中でひらがなを見つけて、触れるようにするのもおすすめです。

    絵本を読み聞かせてみよう

    全部ひらがなで書かれている絵本を、自分で音読させてみましょう。内容ではなく、まずは文字を読むことが目的であるため、0歳時の頃につかっていた乳児向け絵本でもOK。子供はすぐに物語を覚え(または、自分が赤ちゃんのときに聞いた絵本であるため、音を覚えている)、字と音を一致させていきます。

    まずは、大人がゆっくりと読み聞かせをしましょう。言葉がある程度わかるようになると、簡単な言葉で書かれている文字はすぐに覚えてしまいます。そのあと、子供自身で読ませてみます。最初からすべてをスラスラ読める必要はありません。文字を1つでも2つでも「自分で読めた」という感覚が得られることが大切です。そして、しっかりと褒めて、どんどん読める文字を増やしていきましょう。この際、内容がわかったかどうかは置いておいてくださいね。文字を読むだけで、結構必死ですよ!

    下に兄弟姉妹がいる場合には、「読み聞かせ」をお願いする名目で音読させてみてください。お世話と読書を同時に経験させると、「お兄ちゃん・お姉ちゃんだ!」という自覚、責任感、そして喜びを感じるきっかけにもなるでしょう。

    読めるようになってから字を書こう


    ひらがなやカタカナを読めるようになると、字の形について頭で理解できるようになっています。そのため、読めるようになってから字の書き方を教えると、身につくスピードが違うといわれています。

    「お友達がすでにたくさん書けるのだから、自分の子供も早く書くことを早く覚えさせよう」と焦るよりは、しっかりと読めることに重点を置いて教えてあげましょう。必ず文字は書けるようになります。下手でも十分に褒めてあげてくださいね。

    ”読み聞かせ=愛”で、勉強が好きになる?

    子供は絵本を読んでもらうと、親からの愛情を感じます。これは”一緒に読んでいる間は、親を独占している”という安心感が得られるためです。実際、絵本を途中でストップすると、とても悲しそうにしますよね。
    そこで「楽しい」という欲求が満たされ、快い(こころよい)と感じる「快情動」が伴ってくると、子供は物事をよりスムーズに頭の中に入れることができるようになる、といわれています。

    しっかりと愛情を感じている礎(いしずえ)を、絵本の読み聞かせなどで作ってあげる。そうすると、親が自分に何か言ったときも、「それは自分が愛されているから言われているんだ」という感情で受け止めるようになります。

    このように、自分が愛されているという原体験を幼児期にしっかりと作っておくことで、のちに「勉強させられている」と感じたとしても、これは親からの愛情だと受け止め、勉強に対して嫌悪感なく取り組めるようになってくるのです。

    テレビも適度にOK。自分からテレビを消すようになる!

    テレビや動画サイトを見続けていると、「文字を読みたい」といった欲求が沸かなくなるため、テレビを好きなだけ見せるのはNG。ただし、そこでテレビを邪険にするのではなく、テレビ以外に楽しいことがあるということを気付かせるやり方はひとつの方法です。

    例えば、絵本遊びでは親子でのコミュニケーションがありますが、テレビだけを見ていると”対親子”でのコミュニケーションはほとんどありませんよね。
    「絵本を読むとお母さん・お父さんがかまってくれる」「一緒に読めて楽しい」という感情を、子供自身に気付かせてあげるのが大切です。

    テレビは取り上げるのではなく、絵本と1:1で見せるなど、バランスをとってあげましょう。実際、テレビを介した親子間のコミュニケーションも可能であり、例えばかわいい動物の番組を一緒に見て共感したり、クイズ番組で盛り上がるのも楽しい時間です。

    そうして適切なバランスをとることで、「テレビも楽しいけれど、他の遊びも好き」につながり、自分からテレビを消したり他の遊びに移動したりするようになるでしょう。

    ”勉強⇄快情動”の結び付きで、勉強が苦にならない!?


    「勉強嫌いな子」は、なぜ勉強が嫌いなのでしょうか。
    《勉強=面倒、面白くない、なかなか結果がついてこない》……という、《ネガティヴなイメージ=不快情動》が染みついているのかもしれません。

    勉強できる子のママがしていること 12才までの家庭教育マニュアル』(PHP研究所 和田秀樹(著))では、「勉強とポジティヴなイメージを結びつけることで、勉強が好きになる」といった内容が解説されています。では、その具体的な方法について見ていきましょう。

    方法① 勉強と不快情動を結びつけない

    子供を勉強好きにさせるには、勉強と快情動を結びつけるのがポイントです。「勉強をすると、お母さんが喜んでくれるという良い気分(快情動)になる」「勉強をさせられるのは、自分のことを大切にしてくれているからだ」という形を整えてあげます。

    一方、勉強するたびに怒られていると「勉強=怒られた嫌な気分(不快情動)」が結びついてしまい、勉強する気にならなくなってしまいます。そのため、「これもできるようなったね、すごいね」とたくさん褒めてあげることが大原則です。もちろん場合によっては叱ることも大切ですが、愛されている実感を十分に持っていないと全くの逆効果です。

    勉強は叱ることよりも愛情を優先させてあげましょう。特に未就学時期の子供の場合は、叱られるよりも褒められたほうが伸びてきます。

    方法② 勉強の先取りで、できる気にさせる!

    勉強嫌いの子供にならないように、小学校の勉強の先取りをしてしまいましょう。そうすると、小学校に入ったときに「簡単だった」「全部解けた」と子供が得意な顔になり、うれしい気持ちで満たされます。そして「ほかの子供よりも勉強ができる」「私は頭が良いんだ」「学校の勉強って簡単だな」という動機付けをすることで、勉強好きにしてしまうのです。

    例えば、小学校で習うひらがなを全部書けるように準備したり、ひらがなでしりとりができるようにするなど、初歩的なところで大丈夫です。筆者の場合、たまたま親が持っていた「九九の歌」が楽しくて、何度も聞いているうちに暗記してしまい、授業で掛け算がスタートした時にスラスラ言えたことで優越感を持ったことを覚えています。その後算数が好きになり、得意科目にもなりました。

    このように「自分が優位だ」と感じると、その状態を保ちたいと思うため、自発的な勉強へとつながっていくのです。

    まとめ

    必ずしも小学校入る前にしっかりとひらがなを覚えていたり、足し算や引き算ができるようなっている必要はありませんが、小学校に入る前に「勉強をする」ということへの基盤を作っておくのは重要です。また、勉強を重点的に教え込むのではなく、親と子の結びつきもしっかりとつなげておくのもポイントになります。

    この時期の子供は叱って教えるのではなく、褒めて伸ばしてあげるようにしましょう。勉強の楽しさを教えてあげるのもまた、わたしたちの役目の一つですね。

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    【参考・引用・関連リンク】
    Heckman,J.J.(2006) ”Skill Formation and the Economics of Investting in Disadvantaged
    Children,” Science, Vol.312.

    第3回子育て生活基本調査(幼児版)2008年 ベネッセ教育総合研究所
    https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=3284

    「勉強できる子のママがしていること 12才までの家庭教育マニュアル」PHP研究所 和田秀樹(著)

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